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「由希……」

「隆志……」



最悪な出会いだった。
私と達也がラブホテルから出て来たところで、布川に出くわした。



いや、出くわしたというよりも、布川は私がここにいると知って、待ち伏せていたのだろう。



「由希、誰?この人…」

こんなに気まずい雰囲気なのに、この男にはわからないのだろうか?



「今でもまだ信じられない。
だけど、本当のことなんだね。」



私は何も言えなかった。
こんな状況で、一体、何が言えるというのだろう。



「……ごめんなさい。」

束の間の後、絞り出すような声で、私はそれだけ言った。



私はある意味、布川を裏切ったのだから、そう言うべきだと思ったからだ。
正直言って、私の布川に対する気持ちは少しも変わってなかった。
達也に関心はあるけれど、それで、布川への気持ちが変わることはなかったのだ。



だけど、私が彼を裏切ったことには違いない。
私は布川の所有物ではないけれど、やはり世間ではこういうことをする者は悪なのだから。



不意に乾いた音がした。
頭が一瞬、くらっとして…
私は布川に頬を引っぱたかれたんだと気付いた。



「君とはもうおしまいだ。」



布川はそう言ってその場を去り…
私は布川の後ろ姿をみつめるしかなかった。
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