216 / 216
side 慎太郎
26
しおりを挟む
***
「おめでとう~!」
「おめでとう、慎太郎さん!」
あれからの数ケ月は嘘みたいに早く進んだ。
ゆかりさんはいとも簡単に戸籍を貸してくれることを了承し、またまぐろを追っかけてインド洋に行ってしまった。
両親はゆかりさんが46歳ということには驚きつつも、だからといって結婚を反対することなく、俺達の式はとんとん拍子に決まってしまった。
そこそこの結婚式場で、俺達はそこそこの結婚式を挙げた。
ハネムーンは、じいちゃんや小餅さんや美戎と一緒に、あっちの世界に向かった。
久しぶりに会ったチビ達は、俺達との再会をとても喜んでくれた。
結婚後、俺達は小餅さんの強いすすめで、安倍川家の近くに住むことになった。
幸い仕事もすぐにみつけることが出来た。
美戎は小餅さんの知り合いがいるという近所のホストクラブに見習いとして入った。
***
「ただいま~」
「おかえり。」
家に帰ると、良いにおいがただよっててエプロンをかけたゆかりさんがのれんから顔をのぞかせて出迎えてくれる。
幸せ過ぎて、まだどこか夢みたいに思えてしまう。
あっちの世界で妄想したことが、こうして現実になったんだもんな。
「今日はオムライスっていうのを作ってみた。」
「小餅さんに教えてもらったのか?」
「うん。」
ゆかりさんは、毎日、安倍川家に行っては小餅さんに料理を教えてもらってるようだ。
なんだかんだあったけど、あっちの世界に吸い込まれたことは、俺にとっては良い転機になったと思ってる。
(だって、こんな可愛い嫁さんがもらえたんだもんな。)
ゆかりさんや美戎がいるから、あっちの世界にも行きたい時はいつでも行ける。
だから、チビ達とも会いたい時はいつでも会える。
(……本当に幸せだ。)
「慎太郎…?なんだよ、にやけて……」
オムライスを運んできたゆかりさんが、そう言って、俺を睨む。
「な、なんでもないよ。」
「また天国の事でも考えてたんだろう。」
「ち、違うって!」
ぷいと顔をそむけたゆかりさんを、俺は黙って抱きしめた。
「な、なんだよ、急に……」
「ゆかりさんと結婚出来て幸せだって思ってたんだ。」
「……うまいこと言いやがって。」
口ではそんな風に言ったけど、ゆかりさんの目は急に優しい視線に変わってた。
「本当にありがとう、ゆかりさん…」
俺は、幸せを噛みしめながら、ゆかりさんの柔らかな唇にそっと口づけた。
~fin.
「おめでとう~!」
「おめでとう、慎太郎さん!」
あれからの数ケ月は嘘みたいに早く進んだ。
ゆかりさんはいとも簡単に戸籍を貸してくれることを了承し、またまぐろを追っかけてインド洋に行ってしまった。
両親はゆかりさんが46歳ということには驚きつつも、だからといって結婚を反対することなく、俺達の式はとんとん拍子に決まってしまった。
そこそこの結婚式場で、俺達はそこそこの結婚式を挙げた。
ハネムーンは、じいちゃんや小餅さんや美戎と一緒に、あっちの世界に向かった。
久しぶりに会ったチビ達は、俺達との再会をとても喜んでくれた。
結婚後、俺達は小餅さんの強いすすめで、安倍川家の近くに住むことになった。
幸い仕事もすぐにみつけることが出来た。
美戎は小餅さんの知り合いがいるという近所のホストクラブに見習いとして入った。
***
「ただいま~」
「おかえり。」
家に帰ると、良いにおいがただよっててエプロンをかけたゆかりさんがのれんから顔をのぞかせて出迎えてくれる。
幸せ過ぎて、まだどこか夢みたいに思えてしまう。
あっちの世界で妄想したことが、こうして現実になったんだもんな。
「今日はオムライスっていうのを作ってみた。」
「小餅さんに教えてもらったのか?」
「うん。」
ゆかりさんは、毎日、安倍川家に行っては小餅さんに料理を教えてもらってるようだ。
なんだかんだあったけど、あっちの世界に吸い込まれたことは、俺にとっては良い転機になったと思ってる。
(だって、こんな可愛い嫁さんがもらえたんだもんな。)
ゆかりさんや美戎がいるから、あっちの世界にも行きたい時はいつでも行ける。
だから、チビ達とも会いたい時はいつでも会える。
(……本当に幸せだ。)
「慎太郎…?なんだよ、にやけて……」
オムライスを運んできたゆかりさんが、そう言って、俺を睨む。
「な、なんでもないよ。」
「また天国の事でも考えてたんだろう。」
「ち、違うって!」
ぷいと顔をそむけたゆかりさんを、俺は黙って抱きしめた。
「な、なんだよ、急に……」
「ゆかりさんと結婚出来て幸せだって思ってたんだ。」
「……うまいこと言いやがって。」
口ではそんな風に言ったけど、ゆかりさんの目は急に優しい視線に変わってた。
「本当にありがとう、ゆかりさん…」
俺は、幸せを噛みしめながら、ゆかりさんの柔らかな唇にそっと口づけた。
~fin.
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる