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side 慎太郎

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「あ…え…えっと、その……」

俺は焦った。
お金がなくて買えなかったって言うのは簡単なことなんだけど、俺が考えたのはゆかりさんのことなんだ。
あんな宝石を見せられた後に、ゆかりさんに、あの袋を出せって言うのは可哀想な気がしたんだ。
でも、それはあくまでも俺の考えだ。
ゆかりさんは、渡したいかもしれない。
そもそも、贈り物ってものは、その品物の価値がどうこうっていうよりも、心がこもってるかどうかってことが大切だと思うんだ。
ゆかりさんの作ったあの袋には、美戎を想う気持ちは十分にこもってると思う。
……とはいえ、だ。
とはいえ、あの宝石の後のあの袋だぞ。
言ってみれば、今目の前にあるご馳走の後で、賞味期限を一週間くらい過ぎて固くなったパンを出すようなもんじゃないか?
それって……どうなんだろう?



「慎太郎君、どうかしたのか?」

「え……で、ですから…あの……」

どうしようかとまだ迷っているうちに、ミマカさんの非情な問いかけが投げかけられた。



「あ……二人は良いんだ。
僕達、みんな、お金がないから……
それに、今回のことは突然だったからね。」

美戎が、返事に困ってた俺に助け舟を出してくれた。



「ご、ごめんな…美戎…今度……」

「美戎…!これ、あたい達から……」



俺の驚きをよそに、突然、ゆかりさんが立ち上がり、美戎に例の袋を手渡した。




「ありがとう、ゆかりさん…
あ、これ…もしかしたら、スマホのケース?」

「スマホ…?
違うよ、あんたが大切にしてる四角い板を入れるのに良いかと思って……」

「ゆかりさん、あれがスマホっていうものなんだよ。」

「そ、そうなのか?」

「綺麗な布だね。すごく上手に出来てるけど……これ、もしかしてゆかりさんが作ってくれたの?」

ゆかりさんは恥ずかしそうに小さく頷く。



「ありがとう、とっても嬉しいよ。大切に使わせてもらうね。」

ゆかりさんは、美戎の言葉に瞳をうるうると潤ませていた。
そりゃあそうだ。
あんな素敵な微笑みで、あんなに素直に喜んでもらえたら、女子なら誰だってきゅんとするよな。
男の俺でさえも、ちょっとうるっと来たんだから。
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