54 / 216
side 慎太郎
3
しおりを挟む
「大きな声出してどうしたの?
……あ~あ…もったいないなぁ…
食べ物を粗末にしちゃいけないよ。」
美戎は、焼き芋を拾い上げ、ふーふーしてからそれを躊躇なく口の中に放り込んだ。
「おいっ!やめろ!
それは、焼き芋に見えても焼き芋じゃない!
焼き芋に変えられた人間なんだぞ!」
……と、言いたい気持ちはあったが、真実を知ったら美戎はどれほどショックを受けるだろう…
美戎だけじゃない。
俺も一口食べてしまった以上、それを言ってしまうと自分が傷付く。
「言わぬが花」
そんなことわざを頭に思い浮かべ、俺は焼き芋から目をそらした。
「じゃあ、そろそろ行こうか。
あ、とりあえず、俺達が違う世界から来たことはゆかりさんには内緒だぞ。
それを匂わせるようなことも言うなよ。」
「わかった。」
なんだか、この男…顔に似合わずえらく素直だ。
そのせいか、俺もこいつにはちょっと偉そうに振る舞える。
見てくれでは完全に負けてるけれど、腕っ節はいくらなんでもこんなひょろ長いのよりは俺の方が強いだろうし、年齢も明らかに俺の方が上だから、そんなにへいこらする必要はないはずだ。
そう思うと、なんだか妙に気分が良かった。
*
「ただいま、ゆかりさん。
こいつ…俺の友達の美……」
「うわぁ…本物のかっぱだぁ…!」
俺が話してるのもすっかり無視して、美戎はゆかりさんに近付き、頭の上にお皿を触る。
「な、な、なんなんだよ!」
「慎太郎さん、写真撮ってよ。」
そういうと、美戎は俺にスマホを手渡した。
なんだかすっごく格好良いスマホだ。
きっと、最新の機種なんだろうな。
チェッ…俺は古いガラケーだっていうのに…
っていうより、こんなの見せて大丈夫なのか?
ゆかりさんに俺たちのことがバレないか?
って、その前にカメラはどれなんだよ。
スマホなんて触ったこともないからわからないぞ。
「えーっと…どうするんだ?」
「慎太郎さん、スマホ持ってないの?」
美戎は細くて長い人差し指を画面の上に優雅にすべらせ……
「……はい、これを押してね。」
畜生、俺を馬鹿扱いしやがって…
美戎がゆかりさんに寄り添い腰に腕をまわすと、ゆかりさんの緑色の顔がなんだか少し変化したような気がした。
……あ~あ…もったいないなぁ…
食べ物を粗末にしちゃいけないよ。」
美戎は、焼き芋を拾い上げ、ふーふーしてからそれを躊躇なく口の中に放り込んだ。
「おいっ!やめろ!
それは、焼き芋に見えても焼き芋じゃない!
焼き芋に変えられた人間なんだぞ!」
……と、言いたい気持ちはあったが、真実を知ったら美戎はどれほどショックを受けるだろう…
美戎だけじゃない。
俺も一口食べてしまった以上、それを言ってしまうと自分が傷付く。
「言わぬが花」
そんなことわざを頭に思い浮かべ、俺は焼き芋から目をそらした。
「じゃあ、そろそろ行こうか。
あ、とりあえず、俺達が違う世界から来たことはゆかりさんには内緒だぞ。
それを匂わせるようなことも言うなよ。」
「わかった。」
なんだか、この男…顔に似合わずえらく素直だ。
そのせいか、俺もこいつにはちょっと偉そうに振る舞える。
見てくれでは完全に負けてるけれど、腕っ節はいくらなんでもこんなひょろ長いのよりは俺の方が強いだろうし、年齢も明らかに俺の方が上だから、そんなにへいこらする必要はないはずだ。
そう思うと、なんだか妙に気分が良かった。
*
「ただいま、ゆかりさん。
こいつ…俺の友達の美……」
「うわぁ…本物のかっぱだぁ…!」
俺が話してるのもすっかり無視して、美戎はゆかりさんに近付き、頭の上にお皿を触る。
「な、な、なんなんだよ!」
「慎太郎さん、写真撮ってよ。」
そういうと、美戎は俺にスマホを手渡した。
なんだかすっごく格好良いスマホだ。
きっと、最新の機種なんだろうな。
チェッ…俺は古いガラケーだっていうのに…
っていうより、こんなの見せて大丈夫なのか?
ゆかりさんに俺たちのことがバレないか?
って、その前にカメラはどれなんだよ。
スマホなんて触ったこともないからわからないぞ。
「えーっと…どうするんだ?」
「慎太郎さん、スマホ持ってないの?」
美戎は細くて長い人差し指を画面の上に優雅にすべらせ……
「……はい、これを押してね。」
畜生、俺を馬鹿扱いしやがって…
美戎がゆかりさんに寄り添い腰に腕をまわすと、ゆかりさんの緑色の顔がなんだか少し変化したような気がした。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる