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『それでは不満なのか?』

「そういうわけじゃねぇ。
ただ、わからないんだ。
本当にそれでイヴが幸せになれるのか…俺に、本当にそんなことが出来るのかどうかが…」

エレスはまるで小さな子供を見るような瞳でジュリアンをみつめ、小さく微笑んだ。



『……出来るに決まっているだろう。
何も難しく考える必要はない。
おまえがそうしようと決断さえすればそれで良い。
今まで通り、彼女のことを大切に考え、おまえが出来る精一杯のことをやれば良いのだ。
おまえは言ってたじゃないか。
イヴに笑顔が増えて来たことが嬉しいと。
その気持ちさえ持ち続けていれば、何も問題はない。』

「本当か?
本当にそんなことだけで良いのか?」

『あぁ……』

何も言わず頷いたエレスの表情からは言葉以上の説得力が伝わり、ジュリアンは胸の不安が消え去っていくのを感じた。



「……そうか。
……それなら、俺にも出来そうだな…」

ジュリアンははにかみながら…だが、しっかりとした口調で呟いた。
エレスは、ジュリアンにどこか嬉しそうな微笑を返す。



『……しかし、まぁ、それもイヴの返事次第だがな…
やっぱり、おまえとはつきあう気はないと言われてしまえば、それで終わりだ。』

「て、て、てめぇ!!
俺をさんざんその気にさせておいて、それはないだろう…」

ジュリアンは肩を落とし、エレスの方にすがるような視線を向ける。



『まぁ、待ってみようじゃないか…』

エレスは懸命に笑いを堪えながら、一際冷静な声で答えた。






ジュリアンは不安と期待で押し潰されそうになる気持ちを酒で紛らせながら、イヴからの返事を待った。
しかし、三日経ってもイヴは宿屋には来なかった。
やっぱりだめだったんだ…と、ジュリアンが諦めかけた四日目の朝、イヴが宿屋に現れた。 
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