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『ジュリアン…』

「わ、わぁっ!び、びっくりさせんなよ。
急に出て来んなっていつも言ってんだろ!」

突然のエレスの出現に、ジュリアンは驚き身体のバランスを崩した。



『……すまなかった。
それと、事情が変わった。
今日は、イヴの所へは行くな。』

「……は?何言ってんだ、おまえ。
俺はわざわざ市場に行って果物買ってきたんだぞ。」

『詳しいことは、宿で話す…』

そう言い残し、エレスは空気に溶け込むように姿を消した。



「なんだ、あいつ……?」

ジュリアンの自然が宙をさ迷う。
エレスが何のことを言ってるのかは皆目わからなかったが、とりあえず、エレスの話を聞くため、ジュリアンは宿へ向かった。







「な、な、な、な、なんだってーーーー!!」

狭い部屋の中にジュリアンの尋常ではない叫び声が響いた。



『……なんという馬鹿でかい声を出すんだ。』

エレスが耳を押さえ、顔をしかめる。



「な、な、な、なんてことを……」

エレスがイヴに勝手なことを話したことを知り、ジュリアンの心は、これ以上ない程に困惑し、真っ赤になった顔色はいつの間にか真っ青なものに変わっていた。



『おい、しっかりしろ。
酒でも飲んでみたらどうだ?
おまえ…死人のような顔になっているぞ…』

「て、て、てめぇのせいだろ!!
俺が本当に死んじまったらおまえのせいだからな!」

『だから、落ちつけと言っているのだ。
ほら、それを一杯ぐいっといけ。』

エレスに促されるまま、ジュリアンはテーブルの上の酒瓶を掴み、それを瓶ごとぐびぐびとあおる。



『……どうだ、少しは落ちついたか?』

「そんなに急に落ちついてたまるかってんだ!
……あぁ~~、どうしよう!どうしよう…
イヴ、怒ってないかな…きっと怒ってる…いや困ってるかもしれないなぁ…
あぁぁぁ…えらいことになっちまった…
……そうだ!やっぱり、イヴの所に行こう!
行って、あれはエレスが勝手に言ったことで、俺には何の下心もないって言うんだ。
うん、そうだ!それが一番だ!」

膝を叩き、立ちあがったジュリアンの肩にエレスが優しく手を置いた。



『ジュリアン…やめておけ。
イヴの返事をこのまま待つんだ。』

「やなこった。
おまえがくだらないことを言うから、イヴは今頃、どうやって断ろうかと困ってるに違いないんだ。
可哀想じゃないか、早く楽にしてやらないと…」

『良いから、座れ!』

いつになく強い力を込めてエレスはジュリアンの肩を沈め、再び、椅子に座らせた。
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