天使からの贈り物・恋

恋

５

＊



「ジュリアン、ありがとう！
さっきは本当に助かったよ。」

「なに、たいしたことないさ。
それより、こんなに気を遣ってもらって、却って申し訳なかったな。」

ロナウドは、イヴを家に送ってから、そのお礼にとジュリアンを町の酒場に誘った。



「イヴが言ってた連れの人はどうしたんだ？」

「あ…あぁ、あいつは別に連れってわけじゃないんだ。
この町に来る途中で知り合ってな。
なんでも、すごい人見知りで人が多い場所は苦手だって言ってたから、どこか静かな場所に一人でいるんじゃないか？」

「そうなのか？
そんな人見知りが、よくあんたと一緒に町まで来たな。」

「え……？
あ…あぁ、それは…えっと、確か、町の場所がわからないからとかなんとか…」

ジュリアンは、しどろもどろになって答える。



「ここには街道沿いに来れば自然に着くぜ。」

「……あんな奴のことは知らねぇよ！
きっと、あの時はたまたま気が向いたんだろうさ。
そんなことより、あの子…イヴって言ったっけ？
家には誰もいないようだが、大丈夫なのか？」

「あぁ、この町の者はみんな事情は知ってるし、イヴには同情してるから、みんなよく助けてくれるんだ。」

「事情…？」

ロナウドは頷き、イヴについてゆっくりと話し始めた。
イヴの父親は、病気の妻と子供達を置いて、ある日、突然、行方をくらました。
その後、まだ少女だったイヴが母親と妹の面倒を見ながら一生懸命働いたが、イヴ一人の力ではたいした治療も受けさせることは出来ず、母親は、それから数年後に他界した。
それだけではなく無理が祟ったせいで、イヴは目の病にかかってしまい、まだ子供だった妹は親戚の家に引き取られたが、イヴはもう大人だということで一人でこの町に残った。
イヴが残ったのにはもう一つ理由があった。
それは、ミリアムという恋人がいたからだった。
ミリアムは、イヴと知り合ってから彼女のことを助け、親身になって彼女の支えになった。
周りの者達はみな、ミアリムとイヴが結婚するものだと信じていた。
しかし、イヴの目の病が悪化して来た頃、ミリアムは突然この町から姿を消し、戻っては来なかったということだった。



「つまり、イヴも母親と同じ目に遭ったってことだ。
親子揃って信じてた男に捨てられるなんて、酷い話だと思わないか？」

「そりゃあ、酷い！
病気になったからってそれを放っぽって出て行くなんて男として最低だな！
そんな奴、人間じゃねぇ！」

ジュリアンは力任せに、テーブルを拳で叩き付けた。