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「だから、僕は医者になるって宣言したんだ。」

「え?どうしてですか?」

「だって、正直に言ったら、絶対に、そんなことは気にしなくて良いって言われただろうからね。
確かに、絶対に出来ないってわけじゃない。
でも、うちが一流の酒蔵だと言われるのは、父さんの優れた味覚のおかげもあったと思うんだよ。
もしも、僕のせいで酒の味が落ちたら…それは取り返しのつかないことだからね。
だから、僕は医者になりたいって言ったんだ。
本当は何でも良かったんだけど、医者なら特に反対しにくいんじゃないかと思ってね。」

え~…
そんなこと、全然知らなかった。
確かに、正直に話してたら引き止められてただろうね。
柚希さんは長男だからね。
それに、致命的な味音痴じゃないからね。
きっと、普通の人より味覚は良い方だと思うよ。
なんだかもったいないね。

「それで、お医者さんになられたんですね。」

「両親は渋々ながらもそれを許してくれた。
それで、進学する時に、東京に出たんだ。
やっぱりまだ吹っ切れない部分があって、地元にはいたくなかったからね。」

口調には元気がなくて…当時はよほど辛かったんだろうなって、推測出来た。
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