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ルカ(聖夜月ルカ)

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095 : 修道院

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「ヴィクトル、これはゲームだ。
だから、パトリスを連れて来たんだ。」

 「ゲーム?」

パトリスという男は、同性の私から見てもとても魅力的な男だった。
 非の打ち所のない端正な顔立ちに長身で無駄な贅肉のない身体。
 響く低音の声にやわらかな物腰とユーモアのセンス。
そんな彼が、女性にモテるのは当然のことだ。



 「そう、パトリスとあんたのどっちが先に彼女を抱くか。
それも、力づくではなく、本気にさせた上でのことだ。」

 「ヴィクトル、どうだ?
 私が相手では勝てる気がしないか?」

パトリスは、そんなことを言いながら、勝ち誇ったようににやにやと笑っている。



 「冗談だろ。
そりゃあ、あんたが女にモテることは十分知ってるが、私にはあんたにはない金がある。
その証拠に、あんたから私に乗り換えた女も何人かいたはずだが。」

 「ヴィクトル、あんたの拝金主義は父親譲りだな。
 確かに金も男の武器の一つだ。
 勝手に好きなだけ使い給え。
 私はそんなものがなくても勝つ自信がある。」

 「ほぅ…それはたいした自信だな。
よし、この勝負受けよう。
それで、勝った方はどうする?」

 「そうだな…
負けた方が相手の靴を舐めるってのはどうだ?」

パトリスのその言葉で、私は心の中に火がついたことを実感した。

この男には、絶対に負けられない!
パトリスは、すでに勝つ気でいるようだが、私だって女との付き合いには慣れている。
 男に免疫のない真面目な女を落とす事など簡単なことだ。
それに、私には金がある。
それをうまく利用すれば勝てない話ではない。
かくして、私はパスカルとマリアを賭けた勝負することになった。



 *



 「あの女がマリアか…」

どこの田舎から出て来たのかわからないが、真っ黒な髪の毛を一つに束ね、化粧っ気のない顔に足首まで届くような地味な紺色の木綿のワンピースを着ていた。
 女性的な魅力の欠片もない女だ。
 普段の私なら、絶対に手を出さないタイプだが、これはゲームなのだ。

 次の日からすぐにマリアに近付くパトリスとは違い、私は彼女の身辺を入念に探った。
 彼女の好きなもの、毎日の行動パターンを調べた。
 本来ならばもう少し時間をかけて調べたい所ではあったが、パトリスのことがある。
そうそう悠長に構えてもいられない。
 私は、四日目から彼女への接近を開始した。

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