お題小説

094 ： 名声と恋

６

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 「クロワさん！この前は本当にごめんなさいね！！」

「いえ…こちらこそ。
大人気ない真似をしてしまって本当にすみません！！」

「いいえ、私が悪かったの。
突然、あんなことを言ってしまって…」

「そんなことありません！
私が悪かったんです！」

「いいえ！」

クロードは言いあう二人の傍に近付き、声をかけた。



「はいはい、もうそのあたりにしときましょう。
その話はいつまで経っても終わりがなさそうだ。
一番悪かったのは僕です。
クロワさんでも母さんでもありません。」

「そうよ！クロード！
あなたが一番悪いんですよ！
あなたがクロワさんにちゃんとお話せずにお連れしたから、それでクロワさんはびっくりされたのよ。」

「すみません。
でも、もうその話はやめにして、今日はピクニックを楽しみましょうよ！」

「……そうね。
せっかく、こんな気持ち良いお天気になんですもんね。」

クロードの実家に着いた馬車は、そこでクロードの両親を乗せると、また走り出した。
走るごとに、周りの緑が増えて行く。
昼近くに着いたのは、気持ちの良い風のそよぐ森だった。
あたりには、自然の花畑が広がっている。



「まぁ、綺麗な所ですね！」

「今頃が、花が多くて一番良い時期ね。」

「こちらへはよく来られるんですか？」

「子供達がまだ小さい頃は、よく来てましたね。
でも、兄達は結婚してしまいましたし、あの子は私達にはかまってもくれなくて…
それが、クロワさんは自然がお好きだから、ここにピクニックに行こうなんて急に言い出しましてね。」

「母さん！またそんなことを言って…！」

クロードが慌てた様子で口を挟んだ。



「あら、ごめんなさい。
クロワさん、ほら、あそこには薬草も生えてるのよ。
何の薬草か、私にはよくわかりませんが…」

「セージですね。
これはお料理にもよく使われるんですよ。」

「そうだったの。
クロワさんは薬草のことに関してはクロードよりもお詳しいんですってね！」

「そんなことありませんわ。
先生は、私なんかとは違って専門的な知識が豊富ですもの。
お仕事が終わってからも、夜遅くまでいつもお勉強なさって…
なかなか出来る事ではありませんわ。」

「そんな人、面白くないと思わない？」

「いいえ、とてもご立派だと思います。」

その言葉に、夫人の顔がぱっと明るく輝いた。