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ルカ(聖夜月ルカ)

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071 : 顔のない天使

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「あ~あ…
クロワさん、行っちまったな…
よほど、気味が悪かったのかな?」

「まだそんな罰当たりなことを言うか!」

 老人は、今にもつかみかかって来そうな剣幕でそう怒鳴った。
 老人とは思えないような、腹の底から響く声だ。



「ま、待てよ、俺達はそんなこと思ってないさ。
女の人はデリケートなんだよ。
許してやってくれよ。
それより、婆さん、この女神像について知ってることを教えてくれよ!
そういえば、これは女神なのか、それとも天使なのか、どっちなんだ?」

「そんなことはどっちでも良いことじゃ。
この天使様は、さっきも言うた通り、皆を悪いものから守って下さるとてもありがたい天使様なんじゃ!」

「で、あの天使は、いつからここにあるんだ?」

「それは、わしが生まれる前からじゃ。」

「そんな昔から?
 一体、誰が置いてったんだ?」

「わしの父親に聞いた話じゃがな…
ある時、一人の男がこの町に来たそうじゃ。
その男は、どうしたのかはわからんが、相当に身体が弱っておってこの町に着いた次の日には死んでしもうたらしい。
その男を見つけて世話をしたのが、わしの父親なんじゃ。」

「なるほど…
それで、その男があの像を持ってたってことなんだな?」

「その通りじゃ。
その男が死ぬ間際に、この天使様は人々を幸せにしてくれるありがたいお方じゃということと、やっと海の底から助け出す事が出来たと言うとったそうじゃ。」

「海の底!
マルタン、聞いたか?!」

私は、ゆっくりと頷いた。



「なぁ、婆さん!その他には?
その他にはなにか聞いてないのか?
海底神殿の話しとか…」

「海底神殿?そんなものは知らん。」

「そうか…
じゃあ、なんで、この天使には顔や翼がないんだ?」

「それもわからんが、わしの父親が見た時にはもうあんな状態だったらしい。
多分、波にもまれてるうちにあぁなったんじゃないのか?
それで、わしの父親は町に天使様の祠を作ろうとしたんじゃが、顔のない天使なんて薄気味が悪いという者がおって、反対されたそうなんじゃ。
それで、仕方なく父はこの山に祠を建てたんじゃ。
そのうち、登って来るのが大変じゃからということで、一家でこっちに移り住んだんじゃ。」

「そうだったのか…
じゃあ、婆さんはこの山で生まれたのか?」

「そうじゃ。…ほれ、あの家じゃ。」

老婆はそう言って指差した先には、古びた一軒の家があった。
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