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ルカ(聖夜月ルカ)

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069 : 至福の喜び

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二人は、町外れの細い道を並んで歩く。

「リュックさん、この奥に良い場所があるんですよ。」



ナディアがリュックを連れて行ったのは、木立の合間にぽっかりと拓けたなんでもない場所だった。



「ほら、リュックさん、ここに座ってきてください。
ここは風が気持ち良くて、お日様がやわらかで…
私の秘密の場所なんですよ。」

嬉しそうに話すナディアは、まるで子供のように無邪気な微笑を浮かべていた。



「本当だな。
とっても良い場所だな。」

「私ね…寂しくなったり、悩みがある時はいつもここに来てたんです。
ここにこうして座ってじっとしてると、いろんな音が聞こえてくるんですよ。
風の音や、はっぱのこすれる音、小鳥の声…
そんな音を聞いてると、私、なんだかとても穏やかな気持ちになれるんです。」

「そうか…もしかしたら、この前もここに来てたのか?」

「この前…あぁ、あの時はここへ行く途中でリュックさんに会ったから行かなかったんです。」

「あの時もなにか悩みがあったのか?」

「あの時は…」

ナディアの頬が赤く染まった。



「あの時は…リュックさんのことを考えてて…」

「え…?!」

まるで感染したかのように、今度はリュックの頬が赤く染まる。



「私…これからはまたここに来ることが多くなりそうだわ…」

ぽつりと呟くナディアの横顔は、妙に寂しそうに見えた。




「リュックさんがいなくなったら…すごく寂しくなるだろうなぁ…」

ナディアは独り言のようにそう続けた。
その大きな瞳は、溢れた涙をこぼさないように上を向いていた。



「ナディア…
本当にごめん…それと、ありがとう!
でも、好きな奴が出来たら、本当にいつでも嫁に行ってくれよ。
あんたみたいな綺麗な人がばあさんになるまで一人だなんて、もったいないからな!」

「じゃ、じゃあ、早く帰って来て!!
私のことが可哀想だと思うなら、どうか早く帰って来て!」

 「あっ!!」

ナディアはほとばしる想いを押さえきれず、リュックに抱きつくと、突然、そのふくよかな唇を彼の唇に重ねた。



「リュックさん、愛してるわ!
大好きなの!
本当はこのまま別れたくない…
でも…そんなこと言ってもあなたが行ってしまうのはわかってる。
だから、私…待ってますから…必ず、戻って来て!」

「ナディア…」

リュックは呆然としながらも、熱い瞳でナディアをみつめ、そして、再び、二人の唇が重なった。 
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