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030 : 交易商人
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クロワはどうせまだ薬草採りに懸命になっていることだろう。
その間ぶらぶらしてるよりは、この男と酒でも飲んでた方がずっと良い時間つぶしになる。
幸い、男は特に何か悪意を持っている様子もない。
ただ、クロワだけを働かせていることに多少の罪悪感は感じたが、私は男の誘いを受けることにした。
男は、私をテーブルにつかせると、酒やつまみの品をかいがいしくテーブルの上に並べていった。
「乾杯!」
私達はお互いのグラスを合わせた。
「あんた、旅人だろ?
どこから来たんだ?」
「どこから…か…
昨日は古の道の宿に泊まってた…」
「そうじゃなくて、故郷のことさ。
遠くなのか?」
「それは……」
答えたくてもそれは私には答えられない質問だ。
「あ、わけありなら無理に言わなくて良いんだぜ。」
「違うんだ…
実は、私は記憶をなくしてしまって、自分がどこの誰なのかわからないんだ。
当然、故郷のこともすっかり忘れてしまっている。」
「記憶を…!
そういうことがあるとは聞いてはいたが…本当にあるんだな。
そいつは気の毒に…どのくらい前からなんだ?
まだ何も思い出さないのか?」
「ああ、もうずいぶん経つんだが、いまだ何も思い出せないんだ…」
「そうか…で、そのあんたがどこに向かってるんだ?
良い医者の所かなにかか?」
「いや、特にこれといってあてのない旅だ…」
「なんだって?
記憶をなくしたあんたが一人であてのない旅をしてるっていうのか?」
「実は、一人じゃないんだ。
ある女性と一緒に旅をしている。」
「なんだ、そういうことか!
だから、もう無理に昔のことを思い出すことはないってことなんだな。
うらやましいことだな。」
「そうじゃないさ。
彼女は、記憶を失い瀕死になっていた私を救ってくれた恩人なんだ。
君が考えてるような関係じゃない。」
彼は、名をリュックと言った。
リュックは、とても気さくな人間で、私達はまるで昔からの知り合いかなにかのようにいろいろな話に花を咲かせた。
酒がまわって来ると私達はさらに親密さを増し、時折大きな声をあげて笑いながら話を続けた。
その時…彼がおかしなことを口にしたのだ…
その間ぶらぶらしてるよりは、この男と酒でも飲んでた方がずっと良い時間つぶしになる。
幸い、男は特に何か悪意を持っている様子もない。
ただ、クロワだけを働かせていることに多少の罪悪感は感じたが、私は男の誘いを受けることにした。
男は、私をテーブルにつかせると、酒やつまみの品をかいがいしくテーブルの上に並べていった。
「乾杯!」
私達はお互いのグラスを合わせた。
「あんた、旅人だろ?
どこから来たんだ?」
「どこから…か…
昨日は古の道の宿に泊まってた…」
「そうじゃなくて、故郷のことさ。
遠くなのか?」
「それは……」
答えたくてもそれは私には答えられない質問だ。
「あ、わけありなら無理に言わなくて良いんだぜ。」
「違うんだ…
実は、私は記憶をなくしてしまって、自分がどこの誰なのかわからないんだ。
当然、故郷のこともすっかり忘れてしまっている。」
「記憶を…!
そういうことがあるとは聞いてはいたが…本当にあるんだな。
そいつは気の毒に…どのくらい前からなんだ?
まだ何も思い出さないのか?」
「ああ、もうずいぶん経つんだが、いまだ何も思い出せないんだ…」
「そうか…で、そのあんたがどこに向かってるんだ?
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「なんだって?
記憶をなくしたあんたが一人であてのない旅をしてるっていうのか?」
「実は、一人じゃないんだ。
ある女性と一緒に旅をしている。」
「なんだ、そういうことか!
だから、もう無理に昔のことを思い出すことはないってことなんだな。
うらやましいことだな。」
「そうじゃないさ。
彼女は、記憶を失い瀕死になっていた私を救ってくれた恩人なんだ。
君が考えてるような関係じゃない。」
彼は、名をリュックと言った。
リュックは、とても気さくな人間で、私達はまるで昔からの知り合いかなにかのようにいろいろな話に花を咲かせた。
酒がまわって来ると私達はさらに親密さを増し、時折大きな声をあげて笑いながら話を続けた。
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