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027 : 月の船
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この船は一体どこへ向かおうとしているのだろう…?
船はなおも上昇を続け…そして、月に手が届くかと思われた時、目も眩むような光が現れた。
あまりの眩しさに私は目を閉じ、そして再び目を開けた時…
そこには女性の姿があった。
光度を落とした柔らかな光に包まれた女性が宙に浮かんでいるのだ…!!
「あなたは…月の女神…?」
心の中ではそんなものの存在を否定しているはずなのに、私の口から出た言葉はそんな裏腹なものだった。
「ええ、そうです。
何か望みがあるのですね。
あなたのお望みは何ですか?」
「私は…もうこの世から…
いや、そうではない!
私はラザールに勝ちたいのです!
シャトランの覇者になりたいのです!
今回さえ勝つことが出来れば…」
「わかりました。
その願い、かなえましょう…
しかし、その代わりにあなたの一番大切なものを私に下さい。」
「大切なもの…しかし、私には…そんなものはなにもない。
そ、そうだ!…では、私の命でどうですか?」
私がそう言うと、女神はゆっくりと首を振った。
「ようくお考えになって下さい。
……あなたにはもっと大切なものがおありではないですか?」
「もっと大切なもの?
なんです?私に大切なものなんてないと思うのですが…」
「あなたは気付いてらっしゃらないのですね…
ご家族です。
あなたの奥さん、娘さん、そしてご両親。」
「家族……
そうですね…そうかもしれない…
私はもうその家族から見放されてるようなもんですが…
…しかし、さすがに、家族の命はさしあげられない。」
「私が言ってるのは、命のことではありません。
御家族は死ぬわけではないのです。
ただいなくなるだけ…」
「死ぬわけではない…?
いなくなる……そうなのですか?
わかりました。
それなら…」
「本当に良いのですか?」
「ええ…ラザールに勝てるのなら……かまいません。
どうせ、家族は私のことなんてなんとも思ってないんですから…」
今回の大会で優勝することが出来たら、シャトランをやめ、家族とまた一緒に暮らそうと考えていたが、それは、所詮、私の一方的な想いだ。
私の思い通りになるわけがないのだ…
それならば、もう家族なんていなくて良い…
「女神様…どうか、私の願いを…!」
月の女神は深くうなずいた。
船はなおも上昇を続け…そして、月に手が届くかと思われた時、目も眩むような光が現れた。
あまりの眩しさに私は目を閉じ、そして再び目を開けた時…
そこには女性の姿があった。
光度を落とした柔らかな光に包まれた女性が宙に浮かんでいるのだ…!!
「あなたは…月の女神…?」
心の中ではそんなものの存在を否定しているはずなのに、私の口から出た言葉はそんな裏腹なものだった。
「ええ、そうです。
何か望みがあるのですね。
あなたのお望みは何ですか?」
「私は…もうこの世から…
いや、そうではない!
私はラザールに勝ちたいのです!
シャトランの覇者になりたいのです!
今回さえ勝つことが出来れば…」
「わかりました。
その願い、かなえましょう…
しかし、その代わりにあなたの一番大切なものを私に下さい。」
「大切なもの…しかし、私には…そんなものはなにもない。
そ、そうだ!…では、私の命でどうですか?」
私がそう言うと、女神はゆっくりと首を振った。
「ようくお考えになって下さい。
……あなたにはもっと大切なものがおありではないですか?」
「もっと大切なもの?
なんです?私に大切なものなんてないと思うのですが…」
「あなたは気付いてらっしゃらないのですね…
ご家族です。
あなたの奥さん、娘さん、そしてご両親。」
「家族……
そうですね…そうかもしれない…
私はもうその家族から見放されてるようなもんですが…
…しかし、さすがに、家族の命はさしあげられない。」
「私が言ってるのは、命のことではありません。
御家族は死ぬわけではないのです。
ただいなくなるだけ…」
「死ぬわけではない…?
いなくなる……そうなのですか?
わかりました。
それなら…」
「本当に良いのですか?」
「ええ…ラザールに勝てるのなら……かまいません。
どうせ、家族は私のことなんてなんとも思ってないんですから…」
今回の大会で優勝することが出来たら、シャトランをやめ、家族とまた一緒に暮らそうと考えていたが、それは、所詮、私の一方的な想いだ。
私の思い通りになるわけがないのだ…
それならば、もう家族なんていなくて良い…
「女神様…どうか、私の願いを…!」
月の女神は深くうなずいた。
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