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ルカ(聖夜月ルカ)

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024 : 贖罪

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「私がまだ八つの子供の頃の話です。
私の住んでいた村には、とても大きく美しい水晶玉がありましてね。
ある者はその水晶玉のことを村の護り石だと言い、ある者は願いを叶えてくれる石だと言い、とにかくその水晶玉は村人達の心の支えのようなものでもありました。
水晶玉は、いつもは村のはずれの山の祠に納められていたのですが、満月の晩だけは祠の外に出されていました。
なんでも、月の霊力を石に貯えるため…確か、そんな風に言われていたと思います。
月明かりの下の水晶玉はとても美しく、私はいつも家を抜け出しては、その姿を見に行っていたのです。
その日もいつものように、夜更けに家を抜け出して水晶玉を見に行ったのです。
すると、いつもは必ずついていた番人がその時はいなかったのです。
あたりを見回してみましたが、誰もいなかったのです。
私は、あたりを警戒しながら、水晶玉にそっと近付いてみました。
近くで見る水晶玉は、川の水よりもずっと透明で美しく、私は思わずひきこまれるように水晶に手を触れていました。
ひんやりとしたとても心地良い感触でした。
ふだん、触れてはいけないと言われていた水晶に初めて触れたことで、私はだんだんと気分が高揚してきました。
水晶玉を持ち上げて月に透かしてみると、さらにきらきらと美しい輝きを放ちました。
私がその光景にうっとりと見とれていた時、不意にがさがさという音が聞こえ、人の気配を感じました。
突然のことに私は焦り、水晶玉を台座に戻そうとした時、謝って落としてしまったのです。
水晶玉は乾いた音を立てて割れてしまいました。
その時、『なんだ、どうした?誰かいるのか?』という大きな声が聞こえ、私は生きた心地がしなくなりとっさにその場を離れたのですが、運悪く、その現場を見られていたのです。
 見ていたのは旅の者のようでした。
そして、番人とおぼしき男性が割れた水晶を見付けてしまい、それからすぐに私を見つけたのです。
『おまえが水晶玉を割ったのか!』
番人に胸ぐらを掴まれ、そう問いつめられた私は恐ろしさのあまり、ひどいことを言ってしまったのです。
『違う!水晶玉を割ったのは僕じゃない!水晶玉を落として割ったのはあの男だ!』と…旅人を指さしてしまったんです。」

 
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