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021 : 想いを懸けて
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クロワは涙を拭った。
「クロワ、すまないな。
こんな気味の悪い話を聞かせてしまって…
怖かったろう?」
「……いえ……
魔物になってしまったニコラさんがあまりにお可哀想で…」
「クロワ…
あんたは本当に優しい女だな。
それに、こんな馬鹿げた俺の話を信じてくれるのかい?」
「ええ…私は信じます。
ダヴィッドさんが感じられたのは、きっとニコラさんの記憶…本当の出来事だったんだと思います。」
「俺の頭がおかしいんだとは思わないかい?」
「思いません。
世の中には、いろんなことがあるものです。
私が知っていることや体験したことなんて、その中のほんの一部です。
知らないことの方がうんと多いんですから、こんなことがあっても不思議はないと思えるんです。」
「ありがとうよ。
こんな話、だれも信じちゃくれないと思ってたよ。
だから、兄貴にも仲間にも言ってないんだ。」
「その洞窟にはきっとオリヴィアさんの骨や髪の毛があるんでしょうね。
宝物は宝石でもお金でもなく、オリヴィアさんのことだったんでしょう…」
「確かめちゃいないが、俺もきっとそうだと思ってる。」
それから、また何日かが経ち…ダヴィッドの身体ももうほとんど元通りに回復した。
「ありがとう、クロワ。
あんたのおかけですっかり良くなったよ。
長い間、本当にすまなかったな…」
「お元気になられて良かったです。
ダヴィッドさん…実は、ご相談したいことがあるのですが…」
「なんだい?」
ダヴィッドはクロワの話を聞いて、目を丸くした。
「あんたの気持ちはわかるが、それは危険だ…」
「でも、私…
どうしても行きたいんです!
そこへ連れていってくださるだけでも構わないんです。
後は私が一人で…」
「……わかったよ。」
ダヴィッドとクロワはまだみんなが眠ってるうちに町に出た。
「まぁ、眩しい!」
クロワは久しぶりに見た陽の光に、目を細めた。
「すまなかったな。
長い間、あんな暗い部屋に閉じ込めておいて」
「もうそんなことは良いんです。
早く行きましょう!」
クロワとダヴィッドは港に向かい、小舟に乗ってある島を目指した。
古戦場のあるあの島を…
クロワは涙を拭った。
「クロワ、すまないな。
こんな気味の悪い話を聞かせてしまって…
怖かったろう?」
「……いえ……
魔物になってしまったニコラさんがあまりにお可哀想で…」
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あんたは本当に優しい女だな。
それに、こんな馬鹿げた俺の話を信じてくれるのかい?」
「ええ…私は信じます。
ダヴィッドさんが感じられたのは、きっとニコラさんの記憶…本当の出来事だったんだと思います。」
「俺の頭がおかしいんだとは思わないかい?」
「思いません。
世の中には、いろんなことがあるものです。
私が知っていることや体験したことなんて、その中のほんの一部です。
知らないことの方がうんと多いんですから、こんなことがあっても不思議はないと思えるんです。」
「ありがとうよ。
こんな話、だれも信じちゃくれないと思ってたよ。
だから、兄貴にも仲間にも言ってないんだ。」
「その洞窟にはきっとオリヴィアさんの骨や髪の毛があるんでしょうね。
宝物は宝石でもお金でもなく、オリヴィアさんのことだったんでしょう…」
「確かめちゃいないが、俺もきっとそうだと思ってる。」
それから、また何日かが経ち…ダヴィッドの身体ももうほとんど元通りに回復した。
「ありがとう、クロワ。
あんたのおかけですっかり良くなったよ。
長い間、本当にすまなかったな…」
「お元気になられて良かったです。
ダヴィッドさん…実は、ご相談したいことがあるのですが…」
「なんだい?」
ダヴィッドはクロワの話を聞いて、目を丸くした。
「あんたの気持ちはわかるが、それは危険だ…」
「でも、私…
どうしても行きたいんです!
そこへ連れていってくださるだけでも構わないんです。
後は私が一人で…」
「……わかったよ。」
ダヴィッドとクロワはまだみんなが眠ってるうちに町に出た。
「まぁ、眩しい!」
クロワは久しぶりに見た陽の光に、目を細めた。
「すまなかったな。
長い間、あんな暗い部屋に閉じ込めておいて」
「もうそんなことは良いんです。
早く行きましょう!」
クロワとダヴィッドは港に向かい、小舟に乗ってある島を目指した。
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