お題小説

013 ： 背信者

１

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「よし、決行は明日の夜だ！
ついにここまで来たんだな。
これで俺もあくせく働くことなく、面白おかしく暮らせるってもんだ。」

俺は腹を抱えて大きな声で笑った。



 俺の名はヨシム。
一応は商人だ。

もうずいぶんと前の話だが、ある金持ちが俺に儲け話を持ちかけてきた。

ある物を持って帰って来ることが出来れば、金をやるという。
それも、見たこともない程の大金だ。
それこそ一生、遊んで暮らしても使いきれない程の金だ。

そんな金を払うと言うからには、そんじょそこらにあるものではないことってはすぐにわかった。
だが、俺はそいつを探してみることにした。

みつかるまでにかかる費用も先に渡すと言う話だったからだ。
駄目なら駄目で良いじゃないか。
別に俺が損をするわけじゃない。

俺は、その仕事を引き受けた。

金持ちの男が欲しがっていたものは、「竜の心臓」だったのだ。

こいつ、頭がおかしいのか？
竜なんてものが、この世に本当にいると思ってるのか？

しかし、おかしいならおかしいで好都合だ。
路銀をもらうだけもらってとんずらするか、適当なものを竜の心臓だと言って渡せば良い。

良いカモがみつかった…！

俺は、たんまりと路銀をもらい有頂天になっていた。
こんなにツイてて良いんだろうか？…そんなことを考えながらその晩は心安らかに眠った。



次の朝、家を出ると黒いローブをまとった薄気味の悪い男に出くわした。

「でかけるのか？」

「なんだ、おまえは？」

「俺か？俺は見張り役だ…」

「見張り役？」

「そう、おまえがおかしな真似をしないように見張る役目だ。」

「おかしな真似だと？」

「そうだ。
おまえが真面目に竜を探していなかったり、逃げ出そうとしたら…」

「ど、どうするっていうんだ！」

「………殺す…」

 男の目が冷たく光った…
男は今までに見た事のない程、冷酷な瞳をしていた。

えらいことを引き受けてしまった…
あの金持ちの男はこんな物騒な奴を準備していやがったのか…



「…すまん、やっぱり俺には無理そうだ。
金は返すからこの仕事はなかったことにしてくれ。」

「それは無理だ。
もう契約は交わされたのだ。
……どうしても返すというのなら…
お前の命はここまでだ…」