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004 : 夜光珠の杯
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クロワが薬を売ったお金で旅に必要なものを十分に買い揃えることが出来た。
「マルタンさん、大丈夫ですか?
重くないですか?」
「このくらい大丈夫ですよ。」
そうは言ったが、本当は少しこたえていた。
だが、そんなことを言っては男がすたる。
「食糧もこれだけあればたとえ山道で迷っても当分は大丈夫ですね!」
そう言いながら、クロワは屈託のない笑顔を見せた。
「出来ることなら迷いたくはありませんけどね…」
それよりも私が気になっていたのは、あの地図が正確かどうかということだった。
あの地図を信じて進んで大丈夫なんだろうか?
しかし、少し進んで行くと、それは私の杞憂だということがわかった。
地図に描いてある方角に、地図に描いてある通りの山があったのだ。
幸いなことに、さほど危険な山ではなさそうだ。
クロワは役に立ちそうな薬草をみつけてはそれを積みとる。
元々重い荷物がますます重くなっていく…
私は苦しい顔をしないように努めて平静を装ってはいたが、額からは玉の汗が噴き出していた。
「かなり重そうですね。
ごめんなさい。
あんまり採り過ぎましたね。
もうこのくらいにしておきますね。」
そういうクロワも背中の籠にいっぱいの薬草を背負っている。
「本当にあなたは頑張り屋さんですね。」
大きな籠を背負って歩くクロワを見ていると、なんだかおかしくなってきた。
笑っては失礼かと思い、私は笑いを噛み殺す。
数日前まで、こんなことはなかった。
笑いとは無縁で…
話す言葉さえ多くはない毎日だったのに…
(……あそこでの生活はよほど苦しいものだったのだな……)
「少し暗くなってきましたね。
灯りをつけましょう。」
クロワはランプに火を灯し、私の前を歩いていた。
ほどなくして平坦な道が現れ、その先に町の灯りがちらちらとするのが見えてきた。
まさに、あの地図通りだ。
値段からしていいかげんなものなのではないかと思っていたのだが、意外なことにここまではまさにあの地図通りだったのだ。
「まぁ!!」
「これは…!」
町に入って真っ先に驚いたのは光る小道だった。
町の中心部の通りがぼんやりと光っているのだ。
「これはなんなんでしょう?」
「…石…のようですね。
リンでも含んでるんでしょうか?」
「マルタンさん、大丈夫ですか?
重くないですか?」
「このくらい大丈夫ですよ。」
そうは言ったが、本当は少しこたえていた。
だが、そんなことを言っては男がすたる。
「食糧もこれだけあればたとえ山道で迷っても当分は大丈夫ですね!」
そう言いながら、クロワは屈託のない笑顔を見せた。
「出来ることなら迷いたくはありませんけどね…」
それよりも私が気になっていたのは、あの地図が正確かどうかということだった。
あの地図を信じて進んで大丈夫なんだろうか?
しかし、少し進んで行くと、それは私の杞憂だということがわかった。
地図に描いてある方角に、地図に描いてある通りの山があったのだ。
幸いなことに、さほど危険な山ではなさそうだ。
クロワは役に立ちそうな薬草をみつけてはそれを積みとる。
元々重い荷物がますます重くなっていく…
私は苦しい顔をしないように努めて平静を装ってはいたが、額からは玉の汗が噴き出していた。
「かなり重そうですね。
ごめんなさい。
あんまり採り過ぎましたね。
もうこのくらいにしておきますね。」
そういうクロワも背中の籠にいっぱいの薬草を背負っている。
「本当にあなたは頑張り屋さんですね。」
大きな籠を背負って歩くクロワを見ていると、なんだかおかしくなってきた。
笑っては失礼かと思い、私は笑いを噛み殺す。
数日前まで、こんなことはなかった。
笑いとは無縁で…
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「少し暗くなってきましたね。
灯りをつけましょう。」
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まさに、あの地図通りだ。
値段からしていいかげんなものなのではないかと思っていたのだが、意外なことにここまではまさにあの地図通りだったのだ。
「まぁ!!」
「これは…!」
町に入って真っ先に驚いたのは光る小道だった。
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