6 / 15
6
しおりを挟む
*
(あぁ、さっぱりした!)
僕は冷蔵庫から冷えたお茶を取り出して、一気に飲み干した。
今夜は、北村さんの勘違い…いや、僕の嘘…に、なるのか?
とにかく、そういうことから夜勤も休んで良さそうだから、久し振りにゆっくりしよう。
疲労っていうものは自分では気付いていないうちにけっこうたまったりするものらしい。
だって、僕はそれ程疲れてるとは思ってなかったのに、昨夜はあんな風に眠り込んでしまったんだから。 まだ少し眠いような気はするものの、それよりも今は空腹だ。
(なにかおいしいものが食べたい…)
でも、どこかに食べに行くのも面倒だし、リラックスしたい。
家に……あ、今の時間、母さんはパートに行ってるはずだ。
それを思い出した途端、ほんの少し気分が沈んだ。
僕は、今、一人暮らしをしている。 別に実家でも良かったのだけれど、友達にいい年して実家住まいなんて恥ずかしいだの、そんなんじゃますます彼女も出来ないだの言われて、僕がようやく重い腰をあげて一人暮らしを始めたのが昨年のことだった。
とはいっても、実家までは歩いて十分かかるかどうか…僕の部屋もそのままだし、夕食はたいてい食べに行ってて掃除は母さんが週に何度かしに来てくれて… 最近は、パートを始めたから前程頻繁じゃないんだけど。
夕食後、帰るのが面倒臭くなって実家に泊まることもしばしばあるし、この頃では真剣に実家に帰ろうかと思ったりしてる。
その時、不意に携帯が鳴った。
画面に表示されているのは、実家の番号だ。
「はい。」
「あ!テル?あたし~」
「……なんだ、エリカか…」
「なんだとは酷いわね!」
一瞬、恋人同士のようにも思えるこの会話の相手は、妹だ。
僕より六つ年下の二十二歳なんだけど、なぜだか友達には二十歳だと年齢詐称をしている。
芸能人でもないくせに、なぜ年齢を偽るのか……僕には全く意味がわからない。
地味で目立たない僕とは違い、エリカは兄の僕から見ても確かに可愛い。
そこらへんのグラビアアイドルよりずっと可愛いと思う。
だけど、子供の頃から皆にちやほやされて育ったせいか、多少わがままで、そして根気というものが全くない。
バイトも決まったかと思うとすぐにやめてて…年間三十日も働いてないんじゃないかと思う。
それで、エリカの用件はというと、なんでも、北村さんが実家にも連絡をしたらしく、母さんが不在だったからエリカが電話を受けたということらしい。
ま、一応、心配してくれるだけマシといえばマシか…
(あぁ、さっぱりした!)
僕は冷蔵庫から冷えたお茶を取り出して、一気に飲み干した。
今夜は、北村さんの勘違い…いや、僕の嘘…に、なるのか?
とにかく、そういうことから夜勤も休んで良さそうだから、久し振りにゆっくりしよう。
疲労っていうものは自分では気付いていないうちにけっこうたまったりするものらしい。
だって、僕はそれ程疲れてるとは思ってなかったのに、昨夜はあんな風に眠り込んでしまったんだから。 まだ少し眠いような気はするものの、それよりも今は空腹だ。
(なにかおいしいものが食べたい…)
でも、どこかに食べに行くのも面倒だし、リラックスしたい。
家に……あ、今の時間、母さんはパートに行ってるはずだ。
それを思い出した途端、ほんの少し気分が沈んだ。
僕は、今、一人暮らしをしている。 別に実家でも良かったのだけれど、友達にいい年して実家住まいなんて恥ずかしいだの、そんなんじゃますます彼女も出来ないだの言われて、僕がようやく重い腰をあげて一人暮らしを始めたのが昨年のことだった。
とはいっても、実家までは歩いて十分かかるかどうか…僕の部屋もそのままだし、夕食はたいてい食べに行ってて掃除は母さんが週に何度かしに来てくれて… 最近は、パートを始めたから前程頻繁じゃないんだけど。
夕食後、帰るのが面倒臭くなって実家に泊まることもしばしばあるし、この頃では真剣に実家に帰ろうかと思ったりしてる。
その時、不意に携帯が鳴った。
画面に表示されているのは、実家の番号だ。
「はい。」
「あ!テル?あたし~」
「……なんだ、エリカか…」
「なんだとは酷いわね!」
一瞬、恋人同士のようにも思えるこの会話の相手は、妹だ。
僕より六つ年下の二十二歳なんだけど、なぜだか友達には二十歳だと年齢詐称をしている。
芸能人でもないくせに、なぜ年齢を偽るのか……僕には全く意味がわからない。
地味で目立たない僕とは違い、エリカは兄の僕から見ても確かに可愛い。
そこらへんのグラビアアイドルよりずっと可愛いと思う。
だけど、子供の頃から皆にちやほやされて育ったせいか、多少わがままで、そして根気というものが全くない。
バイトも決まったかと思うとすぐにやめてて…年間三十日も働いてないんじゃないかと思う。
それで、エリカの用件はというと、なんでも、北村さんが実家にも連絡をしたらしく、母さんが不在だったからエリカが電話を受けたということらしい。
ま、一応、心配してくれるだけマシといえばマシか…
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
会うたびに、貴方が嫌いになる
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。
アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
お母様と婚姻したければどうぞご自由に!
haru.
恋愛
私の婚約者は何かある度に、君のお母様だったら...という。
「君のお母様だったらもっと優雅にカーテシーをきめられる。」
「君のお母様だったらもっと私を立てて会話をする事が出来る。」
「君のお母様だったらそんな引きつった笑顔はしない。...見苦しい。」
会う度に何度も何度も繰り返し言われる言葉。
それも家族や友人の前でさえも...
家族からは申し訳なさそうに憐れまれ、友人からは自分の婚約者の方がマシだと同情された。
「何故私の婚約者は君なのだろう。君のお母様だったらどれ程良かっただろうか!」
吐き捨てるように言われた言葉。
そして平気な振りをして我慢していた私の心が崩壊した。
そこまで言うのなら婚約止めてあげるわよ。
そんなにお母様が良かったらお母様を口説いて婚姻でもなんでも好きにしたら!
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる