26 / 66
009:翼を広げて
5
しおりを挟む
*
「ごめんね…
僕、さっきは気が緩んで……」
「やっぱり、相手に触れることは相当集中力がいることなの?」
「うん…そうだね。
それに、今までは長い間誰かを掴んでるってことがなかったから。」
ひとしきり笑った後で、僕達はその場に座りこんで、さっきの話をしていた。
「そうか…じゃあ、これからは少し飛んで、一休みしていくことにしよう。」
「……そうだね。」
正直言って、もう空を飛ぶのはいやだった。
だけど、それは言いにくかった。
僕のプライドが邪魔をしたのと、そして、アズロに悪いと思ったから。
「あと二つだよ。」
「……二つって何が?」
「山だよ。
もう二つは越えたから、あと二つ。
あ、まだこの山は越えてないから二つ半って所かな?」
「ここはもう二つ目の山なの!?」
「そうだよ、気付かなかった?
二つの山はくっついてるから、ちょっとわかりにくいけどね。」
信じられなかった。
丸一日歩いたって、山一つ越えられるかどうかわからないのに、たったあれだけで山を二つも越えたなんて…
「じゃあ……もしかしたら、明日にはあそこへ着くの?」
「確か、この山の麓から少し歩いて、それから二つ目の山の中なんだよね?
だったら十分着けると思うよ。」
「……そう…」
アズロの話を聞いて、僕は急に怖くなった。
だって…
母さんの故郷に着くってことは……
僕の命が終わるってことなんだから……
「さて…じゃあ、そろそろでかけようか。」
「うん…そうだね。」
重い気持ちを悟られないように、僕は無理に微笑んで頷いた。
だけど、やっぱり僕はすぐには母さんの故郷には行く気にはなれず…
僕は、たまには宿に泊まりたいと言って、麓の村で荷物運びの仕事をさせてもらった。
アズロもいやがらずに一緒に働いてくれて、僕達はそのお金で、その晩、ひさしぶりに宿に泊まる事が出来た。
「ごめんね…
僕、さっきは気が緩んで……」
「やっぱり、相手に触れることは相当集中力がいることなの?」
「うん…そうだね。
それに、今までは長い間誰かを掴んでるってことがなかったから。」
ひとしきり笑った後で、僕達はその場に座りこんで、さっきの話をしていた。
「そうか…じゃあ、これからは少し飛んで、一休みしていくことにしよう。」
「……そうだね。」
正直言って、もう空を飛ぶのはいやだった。
だけど、それは言いにくかった。
僕のプライドが邪魔をしたのと、そして、アズロに悪いと思ったから。
「あと二つだよ。」
「……二つって何が?」
「山だよ。
もう二つは越えたから、あと二つ。
あ、まだこの山は越えてないから二つ半って所かな?」
「ここはもう二つ目の山なの!?」
「そうだよ、気付かなかった?
二つの山はくっついてるから、ちょっとわかりにくいけどね。」
信じられなかった。
丸一日歩いたって、山一つ越えられるかどうかわからないのに、たったあれだけで山を二つも越えたなんて…
「じゃあ……もしかしたら、明日にはあそこへ着くの?」
「確か、この山の麓から少し歩いて、それから二つ目の山の中なんだよね?
だったら十分着けると思うよ。」
「……そう…」
アズロの話を聞いて、僕は急に怖くなった。
だって…
母さんの故郷に着くってことは……
僕の命が終わるってことなんだから……
「さて…じゃあ、そろそろでかけようか。」
「うん…そうだね。」
重い気持ちを悟られないように、僕は無理に微笑んで頷いた。
だけど、やっぱり僕はすぐには母さんの故郷には行く気にはなれず…
僕は、たまには宿に泊まりたいと言って、麓の村で荷物運びの仕事をさせてもらった。
アズロもいやがらずに一緒に働いてくれて、僕達はそのお金で、その晩、ひさしぶりに宿に泊まる事が出来た。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる