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008:四角い窓

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「シンファ…どうかした?
話すのが辛いのなら……」

「気を遣わせてごめん……僕なら大丈夫だよ。
とにかく、村の人達は心の中ではやっぱり僕のことを疎ましく……いや、そんな生易しい感情じゃないね。
……忌み嫌ってたんだ。
ある朝、僕はただならぬ物音で目を覚ました。
何事かって思ったら、村の人達が僕の家の周りに集まって来てたんだ。
どんどんと扉を叩く音、化け物はここから出ていけっていう罵声…窓にはいつもとは別人のみたいな…鬼のような形相をした村の人達の顔があった。
皆、手に棒きれを持ち…中には鎌を持つ人さえいたよ。
そんな中、母さんは僕が止める暇もなく外に出て行ってね…
母さんが殺されたらどうしようって気が気じゃなかったけど、扉は外から押さえ付けられ、窓からは何人かの村人が僕のことをじっと見てて僕にはどうしようもなかったんだ。」

「そ…それで、お母さんは無事だったのかい?」

「あぁ…しばらくすると母さんは無事に戻って来たよ。
だけど……そこからが最悪だった。
母さんは僕にこの村から出て行けと言った……
おまえのせいで、私までがこの村に住めなくなるって……
アズロ……わかるかい?その時の僕の気持ちが…
村の人に嫌われるのはまだ良い……
だけど……僕は……この世で一番信じていた人に裏切られたんだ……」

「……シンファ…」

不意に伸ばされたアズロの腕は、ただ空しく僕の身体をすり抜けた。



「……母さんは言った。
おまえなんか、どこに行っても誰にも相手にされないだろうし、みんなに気味悪がられるだけだって。
おまえが暮らせるとしたら、私の故郷みたいな誰からも相手にされない荒れ果てた村だけだろうって言って、笑ったんだよ……
そして、僕は小さな鞄一つを手渡されて、家から放り出された。
まだそれが現実のことだと思えなかった。
だけど、僕が外に出ると、途端に村の人達の罵声や冷たい視線に迎えられて……僕が扉を叩いても母さんは何も応えてはくれなかった。
扉は堅く閉じられたまま…村の人達の声はなおさら激しくなって…出ていけ!と大合唱され、挙句の果てには石つぶてに見送られながら、僕は村を離れた……」



懸命に堪えてたのに…
その時のことが思い出されると、僕の瞳からは熱い涙がこぼれ落ちた。
でも、これは、悲しみの涙じゃない……
悔しさの涙だ…
その時から、僕は彼らへの…母さんへの想いを変えた。
大切な人から、憎しみの相手へ…
復讐の相手へと変わったんだ。

絶対に許さない…

僕はその決意を深く心に刻んだ。
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