企画novel

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
26 / 29
07 知らない場所の生活

しおりを挟む
「おい…なんでこんなに真っ暗なんだ?!」

 『周りになにもないからじゃないですか?』

 「なにもって…民家もないのか?」

 『そのようですね…』

ギャブリエは人差し指で宙を丸くなぞる。
その瞬間、ほのかな灯かりを放つ光の玉が現れた。



 「では、今夜はどこかで野宿ということになるのか?」

 『そういうことになるでしょうね。』

 事も無げに答える瑠璃石に、ギャブリエは軽く舌打ちをして眉をひそめた。



 『ギャブリエ様、そんな品のないことはおやめ下さい。
あなたほどの地位の方には似合いませんよ。』

 「うるさい!
 今の私はただの魔法使いの女だ!
 何をしようと私の勝手だ!」

 『またそんなことを…
野宿くらいでキレてどうなさるんです。
あなたはこれからもディディエ様の安全を…』

 「もとはといえば、すべてあの者が悪いのだ!
あいつは天界にいる時から私に迷惑をかけてばかりだったが、挙句の果てにこんなことになろうとは…」

ギャブリエは、がっくりと肩を落とした。



 『ギャブリエ様、そんなに落ちこんでどうするんです。
あ、あそこに大きな木があります。
 今夜はあの木の根元でお休みになられてはいかがですか?』

ギャブリエはその言葉に答えもせず、黙って木の方へ歩き出した。



 *



 『ギャブリエ様、おはようございます!
 昨夜はよく眠られましたか?』

 「眠れるわけがなかろう…」

その言葉が嘘でないことは、ギャブリエの目の下のクマが物語っていた。



 『そ、そうだ!
ギャブリエ様!ここからは浮遊の術で進まれてはいかがです?
 歩いて行くより早く着くのではありませんか?』

 「それもそうだな。
ではそうしよう!」

ギャブリエの声に少し元気が感じられた。
ギャブリエが深呼吸をすると、その身体が静かに地上から30cmほどの高さに浮かび上がった。



 「今夜は、絶対宿で泊まるぞ!」

その言葉と同時に、ギャブリエの身体は滑るように前へ進み出した。
ギャブリエは、街道を進み続けた。
 太陽が真上にあがり、そしてそれが海の向こうに姿を消しても、止まろうとはしなかった。



 *



 『ギャブリエ様!』

ギャブリエの身体が急によろめいたかと思うと、一瞬でバランスを崩し、そのままばったりと倒れて動かなくなった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

処理中です...