97 / 115
070.柔らかな風
4
しおりを挟む
(こんな壁さえなければ……)
憎しみと諦めの入り混じった視線で壁をきっとにらみつけ、そして、ウェンディは草原にどさりと身を沈めた。
膝上程の高さしかない草だが、寝転ぶとウェンディの姿をすっぽりと隠してしまう。
(こうやってまっすぐに空を見上げたら、ここが高い壁に囲まれてることを忘れられる……)
ここが閉鎖された世界であることも
数ヶ月後に迫った結婚のことも
ファビアンと離れ離れになることも…
「こら!そんな所でサボってるのはどこのどいつだ!」
不意に耳に届いた大きな声に、ウェンディは驚いて身を起こす。
「ファビアン!……どうしてわかったの!?」
「おまえのことなら俺はなんだってわかるのさ。」
本当は遠くからウェンディのことを見ていたこと等おくびにも出さず、ファビアンは自慢気にそう言ってのけた。
ウェンディは不思議に感じながらも、理由がわからずただ曖昧に笑う。
「ねぇ、ファビアン…もう一度ここで空を見てみない?
ここはあそこよりも風が気持ち良いわよ。」
「あっちの方が暖かいのに…」
口ではそう言いながらも、ファビアンはゆっくりとウェンディの傍に近付いた。
「ほら…ここは風がとても優しいでしょう?」
「……まぁな。」
「ここで空を見ましょうよ。」
「夕食の支度は良いのか?」
「すぐに帰るわ。
ほんの少しだけ…」
二人は、草原に寝転んで空を見上げた。
柔らかな風が草を揺らし、さやさやと静かな音を立てる。
「いつか…限りのない空が見たいわ。」
「……俺も……」
「えっ!?今、なんて…」
「なにも言ってないよ。」
驚いて顔をのぞきこむウェンディには目もくれず、ファビアンは真っ直ぐに空をみつめ続ける…
ファビアンのそんな様子にウェンディも諦めて、再び空を見上げた。
(いつか、きっと……)
~Fin
憎しみと諦めの入り混じった視線で壁をきっとにらみつけ、そして、ウェンディは草原にどさりと身を沈めた。
膝上程の高さしかない草だが、寝転ぶとウェンディの姿をすっぽりと隠してしまう。
(こうやってまっすぐに空を見上げたら、ここが高い壁に囲まれてることを忘れられる……)
ここが閉鎖された世界であることも
数ヶ月後に迫った結婚のことも
ファビアンと離れ離れになることも…
「こら!そんな所でサボってるのはどこのどいつだ!」
不意に耳に届いた大きな声に、ウェンディは驚いて身を起こす。
「ファビアン!……どうしてわかったの!?」
「おまえのことなら俺はなんだってわかるのさ。」
本当は遠くからウェンディのことを見ていたこと等おくびにも出さず、ファビアンは自慢気にそう言ってのけた。
ウェンディは不思議に感じながらも、理由がわからずただ曖昧に笑う。
「ねぇ、ファビアン…もう一度ここで空を見てみない?
ここはあそこよりも風が気持ち良いわよ。」
「あっちの方が暖かいのに…」
口ではそう言いながらも、ファビアンはゆっくりとウェンディの傍に近付いた。
「ほら…ここは風がとても優しいでしょう?」
「……まぁな。」
「ここで空を見ましょうよ。」
「夕食の支度は良いのか?」
「すぐに帰るわ。
ほんの少しだけ…」
二人は、草原に寝転んで空を見上げた。
柔らかな風が草を揺らし、さやさやと静かな音を立てる。
「いつか…限りのない空が見たいわ。」
「……俺も……」
「えっ!?今、なんて…」
「なにも言ってないよ。」
驚いて顔をのぞきこむウェンディには目もくれず、ファビアンは真っ直ぐに空をみつめ続ける…
ファビアンのそんな様子にウェンディも諦めて、再び空を見上げた。
(いつか、きっと……)
~Fin
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる