STORY BOXⅡ

０２４．機械少女

８

（隣町の方がここよりも、町の規模が大きい。
それは、人口も多いということ。
やはり、隣町で探した方が効率が良さそうね。）



ヒルダは、隣町へ向かい、暗い夜道を歩いていた。
 彼女の瞳には、暗いことなどまるで関係がない。
 星一つない暗闇だろうが、内臓されたセンサーによりすべてが認識出来るのだ。



ヒルダは、「お父様」の言葉を思い出していた。


 「良いか、ヒルダ。
おまえが真の人間になるには、『心』を手に入れなくてはならん。
おまえと同じ年恰好の少女からいただくのだ。
 必ず、身よりのない少女を選ぶのだぞ。
それに、出来るだけ優しい人間が良い。
そうだ…
動物や植物が好きかどうかを尋ねなさい。
 会話をする時に、笑顔が多いかどうかを確認しなさい。

ターゲットが決まったら、あとはこの前教えた通りにするのだ。
 『心』に傷をつけないようにうまく切り取るのだぞ。
 取ったら、後はそれをおまえの体内におさめるだけだ。
あとはすべて身体が然るべき処理をしてくれる。
おまえは、その少女の身体を誰にもみつからない所に隠すだけで良い。

 良いか、ヒルダ。
 『殺す』ということはとても悪いことだ。
しかし、おまえが完全体になるために、それは避けては通れない事なのだ。
だから、すべてが終わったら、そのことに関するメモリーのみを消去するのだ。
わかったな。
それが、最初で最後の『殺人』なのだ。」



 （お父様、もう少しです。
もう少しで、私は完全体になれるのです。
あなたの夢だった心を持った完全な機械少女に…
ありがとう、ジュリアンさん。
あなたが、私を土の中から掘り出してくださったおかげです。）



 隣の町の灯かりは、もう間近…