STORY BOXⅡ

０２１．銀の鳥籠

１

「誰か…！！
 誰か、助けてーー！」

エレナの悲痛な叫びは暗闇の中に、空しく消えた。



 小さな光さえ見えない闇の中を、エレナは走り続けた。
 方向もわからない中を、エレナは走って走って…息が切れるほど走り続け、血を吐くように叫び続けた。

 疲れ果てたエレナの足がもつれて倒れて込む…
しかし、エレナはその痛みにも耐え、再び立ち上がって走り出した。



 「誰かーーーー！
 誰か、助けて！」

エレナの声はいつしかかすれ、消え入りそうなものになっていた。



 （もうだめ…
私は…もう……）

 全てを投げだしてしまいたい…
諦めてしまえば楽になれる…
もう怖いものも全部なくなる…

そう考えたエレナの耳に、小さな声が届いた。



 「エレナ…こっちよ…」

 「だ、誰？？」

 「こっち…こっちよ…」

エレナは、小さな声に導かれるように耳を澄ませて歩き始めた。



 「エレナ…あと少し…あと少しよ…」

 声は子供のもののようだった。
どこか懐かしい感じのするその声は、エレナの心に希望の光を与えた。



 「どこ？あなたはどこにいるの？」

 「ここよ、あなたは確実に私に近付いてる…あと少し…あとほんの少し…
ほら…エレナ、前を良く見て！」

 声に従い、前をみつめるエレナの瞳に、鈍く光るものが映った。
その瞬間、エレナの鼓動は速さを増し、光に向かって走り出していた。



 「エレナ、やっとみつけてくれたのね！
ここよ！」

 格子の向こう側から小さな少女が手を振っているのを確認したエレナは、溢れ出る涙を拭いながら少女に向かって走り込んだ。