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007.迷いの森
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「ヴェール!!」
「レヴ…さん…」
「大丈夫か!!どこもなんともなってはいないか?」
「え…ええ、大丈夫です。」
「そうか…それは良かった。
君が森で迷うはずはないから、急な病にでも倒れたのではないかと心配していたのだ…」
「レヴさん…私は…」
「どうした…?」
「私は……」
レヴの顔を見た途端、ヴェールは込み上げる想いを抑えることが出来なくなった。
こらえようと思う気持ちとは裏腹に、ヴェールの瞳から涙が勝手に流れて落ちる。
「ヴェール、どうした!
何があった!
しっかりしろ!」
レヴは、ヴェールの身体を支えながら木陰へと移動する。
「……話してくれ、ヴェール」
レヴの差し出したハンカチで涙を拭い、ヴェールはゆっくりと話し始めた。
昨日からさっきまでの夢のような出来事を…
*
「そうだったのか…そんなことが…」
「私の話を信じてくださるのですか?」
「当たり前じゃないか…
君が、そんな嘘を吐くはずがない…」
「レヴさん…」
「……しかし、君はさすがは森の長だな…
私なら…あるいはそのまま居着いてしまうかもしれない。」
「まさか…」
「いや、私は君が思っている程、強い男ではない…
だからこそ、リーズと同じように君の血をもらったんだ。
人はいつかは亡くなる。
それはどんな者であろうとも逃れようのないことだ。
しかし、リーズと別れる時のことを考えると、私はそれだけでもとても怖くなるのだ。
実に情けない男だよ。」
「でも、レヴさんにも娘さんがいらっしゃるのでしょう…?」
「その時になったら、私はそんなことも忘れてしまうかもしれない…
私は無責任な人間なのだよ…
ヴェール、この森は迷いの森と呼ばれているらしい。
一度迷い込んだら二度と戻れないと言われているそうだが…実は、戻れないのではなく、皆、自分の意思で留まるのではないだろうか…
ここにいれば、幸せでいられるのだから…」
「レヴさん…
この森がそんな危険な場所だと知っていながら、ここへいらっしゃったのですか?!」
「ヴェール、私は元々方向感覚が悪いのだ。
どんな森であろうと危険なことに変わりはないさ。」
「レヴさん、早く出ましょう…
ここは、私達がいるべき場所ではありません。」
「ヴェール…本当に良いのか…?」
「何、バカなことをおっしゃってるんです。
愛しいリーズさんと可愛い娘さんがレヴさんをお待ちですよ。
さぁ、急ぎましょう!」
「……そうだな…
じゃあ、戻るとするか…」
そこから先の道は、少しも迷うことはなかった。
まるでいつものヴェールの方向感覚が急によみがえったようだった。
「レヴ…さん…」
「大丈夫か!!どこもなんともなってはいないか?」
「え…ええ、大丈夫です。」
「そうか…それは良かった。
君が森で迷うはずはないから、急な病にでも倒れたのではないかと心配していたのだ…」
「レヴさん…私は…」
「どうした…?」
「私は……」
レヴの顔を見た途端、ヴェールは込み上げる想いを抑えることが出来なくなった。
こらえようと思う気持ちとは裏腹に、ヴェールの瞳から涙が勝手に流れて落ちる。
「ヴェール、どうした!
何があった!
しっかりしろ!」
レヴは、ヴェールの身体を支えながら木陰へと移動する。
「……話してくれ、ヴェール」
レヴの差し出したハンカチで涙を拭い、ヴェールはゆっくりと話し始めた。
昨日からさっきまでの夢のような出来事を…
*
「そうだったのか…そんなことが…」
「私の話を信じてくださるのですか?」
「当たり前じゃないか…
君が、そんな嘘を吐くはずがない…」
「レヴさん…」
「……しかし、君はさすがは森の長だな…
私なら…あるいはそのまま居着いてしまうかもしれない。」
「まさか…」
「いや、私は君が思っている程、強い男ではない…
だからこそ、リーズと同じように君の血をもらったんだ。
人はいつかは亡くなる。
それはどんな者であろうとも逃れようのないことだ。
しかし、リーズと別れる時のことを考えると、私はそれだけでもとても怖くなるのだ。
実に情けない男だよ。」
「でも、レヴさんにも娘さんがいらっしゃるのでしょう…?」
「その時になったら、私はそんなことも忘れてしまうかもしれない…
私は無責任な人間なのだよ…
ヴェール、この森は迷いの森と呼ばれているらしい。
一度迷い込んだら二度と戻れないと言われているそうだが…実は、戻れないのではなく、皆、自分の意思で留まるのではないだろうか…
ここにいれば、幸せでいられるのだから…」
「レヴさん…
この森がそんな危険な場所だと知っていながら、ここへいらっしゃったのですか?!」
「ヴェール、私は元々方向感覚が悪いのだ。
どんな森であろうと危険なことに変わりはないさ。」
「レヴさん、早く出ましょう…
ここは、私達がいるべき場所ではありません。」
「ヴェール…本当に良いのか…?」
「何、バカなことをおっしゃってるんです。
愛しいリーズさんと可愛い娘さんがレヴさんをお待ちですよ。
さぁ、急ぎましょう!」
「……そうだな…
じゃあ、戻るとするか…」
そこから先の道は、少しも迷うことはなかった。
まるでいつものヴェールの方向感覚が急によみがえったようだった。
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