STORY BOXⅡ

ルカ(聖夜月ルカ)

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007.迷いの森

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「ヴェール!!」

 「レヴ…さん…」

 「大丈夫か!!どこもなんともなってはいないか?」

 「え…ええ、大丈夫です。」

 「そうか…それは良かった。
 君が森で迷うはずはないから、急な病にでも倒れたのではないかと心配していたのだ…」

 「レヴさん…私は…」

 「どうした…?」

 「私は……」

レヴの顔を見た途端、ヴェールは込み上げる想いを抑えることが出来なくなった。
こらえようと思う気持ちとは裏腹に、ヴェールの瞳から涙が勝手に流れて落ちる。



 「ヴェール、どうした!
 何があった!
しっかりしろ!」

レヴは、ヴェールの身体を支えながら木陰へと移動する。



 「……話してくれ、ヴェール」

レヴの差し出したハンカチで涙を拭い、ヴェールはゆっくりと話し始めた。
 昨日からさっきまでの夢のような出来事を…







 「そうだったのか…そんなことが…」

 「私の話を信じてくださるのですか?」

 「当たり前じゃないか…
君が、そんな嘘を吐くはずがない…」

 「レヴさん…」

 「……しかし、君はさすがは森の長だな…
私なら…あるいはそのまま居着いてしまうかもしれない。」

 「まさか…」

 「いや、私は君が思っている程、強い男ではない…
だからこそ、リーズと同じように君の血をもらったんだ。
 人はいつかは亡くなる。
それはどんな者であろうとも逃れようのないことだ。
しかし、リーズと別れる時のことを考えると、私はそれだけでもとても怖くなるのだ。
 実に情けない男だよ。」

 「でも、レヴさんにも娘さんがいらっしゃるのでしょう…?」

 「その時になったら、私はそんなことも忘れてしまうかもしれない…
私は無責任な人間なのだよ…
ヴェール、この森は迷いの森と呼ばれているらしい。
 一度迷い込んだら二度と戻れないと言われているそうだが…実は、戻れないのではなく、皆、自分の意思で留まるのではないだろうか…
ここにいれば、幸せでいられるのだから…」

 「レヴさん…
この森がそんな危険な場所だと知っていながら、ここへいらっしゃったのですか?!」

 「ヴェール、私は元々方向感覚が悪いのだ。
どんな森であろうと危険なことに変わりはないさ。」

 「レヴさん、早く出ましょう…
ここは、私達がいるべき場所ではありません。」

 「ヴェール…本当に良いのか…?」

 「何、バカなことをおっしゃってるんです。
 愛しいリーズさんと可愛い娘さんがレヴさんをお待ちですよ。
さぁ、急ぎましょう!」

 「……そうだな…
じゃあ、戻るとするか…」



そこから先の道は、少しも迷うことはなかった。
まるでいつものヴェールの方向感覚が急によみがえったようだった。
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