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001.星の砂
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それからの日々は、穏やかで幸せなものだった。
刺激的なことは何もなかったが、毎日が満ち足りていた。
サリーにもやっと家庭の温もり、家族というものが実感として感じられた頃、ピエールが病に倒れた。
高齢という事もあり、特に出来る治療ももないままに、ピエールは静かに旅立った。
(ピエール…なんで逝っちゃったんだよ…
あたし、寂しいよ…)
店にいると、なにを見てもピエールのことが思い出されてしまう。
酒で気持ちを紛らわせようと思っても、どこかでピエールの声が聞こえるような気がする。
「あんまり飲み過ぎんようにな…」
そんな声が聞こえるような気がして、サリーは少ししか飲むことが出来なかった。
幸せな日々はあっという間に過ぎるのに、辛い日々はその何倍にも感じられる。
(レヴやヴェールは、どうしてるかな。
それに、ジャン…
そういえば、あいつ、あれから一度も来てくれなかったね…
まったく冷たい奴だよ!)
それから数日経った時だった。
いつものように、めったに人の来ない店のカウンターに座るサリーの前に一人の客が訪れた。
「サリー!!やっとみつけた!!」
「ジャン!
一体、どうしたんだい?」
「どうした…って、遊びに来たんじゃないか。」
「遊びにって…あれからもう何年経つんだ?
3年…?いや、4年か?
なんで今頃…」
「それが…」
「まぁ、いいや。
奥で話そうよ。
どうせ、お客なんて来やしないんだから。」
ジャンの話によると、あれからしばらくしてサリーの所を尋ねてみようと思ったものの、住所を書いた紙をなくしてしまい、諦めていたとのことだった。
「なのに、どうして来れたんだい?」
「このおかげなんだ…」
そう言って、ジャンが差し出したのは、小さな皮袋だった。
皮袋の中に入っていたのはあの星の砂だ。
「あ…これ…」
「あんな所に入れてあったから、なかなか気付かなかったじゃないか。」
あの星砂は、サリーが帰り際にジャンの買い物の山にそっとしのばせたものだった。
「あんたが幸せになれますように」
そう書かれた小さな紙切れと共に皮袋に入っていた星の砂だ。
刺激的なことは何もなかったが、毎日が満ち足りていた。
サリーにもやっと家庭の温もり、家族というものが実感として感じられた頃、ピエールが病に倒れた。
高齢という事もあり、特に出来る治療ももないままに、ピエールは静かに旅立った。
(ピエール…なんで逝っちゃったんだよ…
あたし、寂しいよ…)
店にいると、なにを見てもピエールのことが思い出されてしまう。
酒で気持ちを紛らわせようと思っても、どこかでピエールの声が聞こえるような気がする。
「あんまり飲み過ぎんようにな…」
そんな声が聞こえるような気がして、サリーは少ししか飲むことが出来なかった。
幸せな日々はあっという間に過ぎるのに、辛い日々はその何倍にも感じられる。
(レヴやヴェールは、どうしてるかな。
それに、ジャン…
そういえば、あいつ、あれから一度も来てくれなかったね…
まったく冷たい奴だよ!)
それから数日経った時だった。
いつものように、めったに人の来ない店のカウンターに座るサリーの前に一人の客が訪れた。
「サリー!!やっとみつけた!!」
「ジャン!
一体、どうしたんだい?」
「どうした…って、遊びに来たんじゃないか。」
「遊びにって…あれからもう何年経つんだ?
3年…?いや、4年か?
なんで今頃…」
「それが…」
「まぁ、いいや。
奥で話そうよ。
どうせ、お客なんて来やしないんだから。」
ジャンの話によると、あれからしばらくしてサリーの所を尋ねてみようと思ったものの、住所を書いた紙をなくしてしまい、諦めていたとのことだった。
「なのに、どうして来れたんだい?」
「このおかげなんだ…」
そう言って、ジャンが差し出したのは、小さな皮袋だった。
皮袋の中に入っていたのはあの星の砂だ。
「あ…これ…」
「あんな所に入れてあったから、なかなか気付かなかったじゃないか。」
あの星砂は、サリーが帰り際にジャンの買い物の山にそっとしのばせたものだった。
「あんたが幸せになれますように」
そう書かれた小さな紙切れと共に皮袋に入っていた星の砂だ。
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