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獣人
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(畜生…この若造…
昨夜はあんなに悦んでいたくせに…)
不毛な罵りあいを続けるうちに、グレースの心の中にダルシャに対する憎しみの炎が燃えあがる。
「すまんかったな。
こんなくだらない言い争いはもうやめようじゃないか。
わしが悪かった。
おまえさんも、こんな婆さんとその…あんなことがあったと思うと気分が悪かろう?
昨夜の記憶をすっかり消してやるから、それで許してくれんか?」
グレースは、ダルシャに頭を下げながら、愛想笑いを浮かべる。
「……そんなことを言ってまた騙すのではなかろうな?」
「おまえさんも疑り深いな。
そんなことするわけなかろう?
そうだ…ついでに………」
グレースはダルシャに近付き、耳元で何事かを囁いた。
それを聞いたダルシャの顔がにわかに緩む。
「魔法でそんなことまで出来るのか…」
「おまえさんも好きじゃのう…」
グレースは、そう言ってダルシャを肘で小突き、意味ありげな笑みを浮かべる。
「よし、では、早く始めてくれ!
私はどうすれば良いんだ?」
「おまえさんはただ目をつぶってそこにいてくれたら良いんじゃ。」
「わかった。」
ダルシャはグレースに言われるまま、その場で目を瞑る。
グレースは、その隙に魔法の強壮薬を口に含むと、低い声で呪文を唱え始めた。
(なんだか、不気味な声だな…
本当に大丈夫なんだろうな…?)
心配になったダルシャが薄目を開けてのぞき見た老婆は、耳で聞いていたのと同様に、ただ一心不乱に呪文を唱えるばかりで、それがどういう呪文なのかを知る術はなかった。
不安を感じながらもダルシャにはどうすることも出来ず、どうしたものかと考えているうちに、グレースの呪文は唐突に終わった。
「……終わったのか?」
「いや、この魔法には、一つ、必要な材料があったのを思い出した。
今、取ってくるから待ってておくれ。
なぁに、すぐに戻って来る。」
「そうか…じゃ、早く頼むぞ。」
「あぁ、すぐ戻る…」
そう言って扉の方へ歩き出したグレースは不意に歩みを止める。
「どうかしたのか?」
「おまえさん、ねずみは好きかい?」
グレースはダルシャに背を向けたまま、そう尋ねた。
「ねずみ…?
特に好きでも嫌いでもないが…ねずみがどうかしたのか?」
「いや…なんでもない……」
グレースはそのまま部屋を後にした。
(……おかしなことを尋ねる奴だ…)
ーーーその後、いつまで待ってもグレースは戻って来なかった。
昨夜はあんなに悦んでいたくせに…)
不毛な罵りあいを続けるうちに、グレースの心の中にダルシャに対する憎しみの炎が燃えあがる。
「すまんかったな。
こんなくだらない言い争いはもうやめようじゃないか。
わしが悪かった。
おまえさんも、こんな婆さんとその…あんなことがあったと思うと気分が悪かろう?
昨夜の記憶をすっかり消してやるから、それで許してくれんか?」
グレースは、ダルシャに頭を下げながら、愛想笑いを浮かべる。
「……そんなことを言ってまた騙すのではなかろうな?」
「おまえさんも疑り深いな。
そんなことするわけなかろう?
そうだ…ついでに………」
グレースはダルシャに近付き、耳元で何事かを囁いた。
それを聞いたダルシャの顔がにわかに緩む。
「魔法でそんなことまで出来るのか…」
「おまえさんも好きじゃのう…」
グレースは、そう言ってダルシャを肘で小突き、意味ありげな笑みを浮かべる。
「よし、では、早く始めてくれ!
私はどうすれば良いんだ?」
「おまえさんはただ目をつぶってそこにいてくれたら良いんじゃ。」
「わかった。」
ダルシャはグレースに言われるまま、その場で目を瞑る。
グレースは、その隙に魔法の強壮薬を口に含むと、低い声で呪文を唱え始めた。
(なんだか、不気味な声だな…
本当に大丈夫なんだろうな…?)
心配になったダルシャが薄目を開けてのぞき見た老婆は、耳で聞いていたのと同様に、ただ一心不乱に呪文を唱えるばかりで、それがどういう呪文なのかを知る術はなかった。
不安を感じながらもダルシャにはどうすることも出来ず、どうしたものかと考えているうちに、グレースの呪文は唐突に終わった。
「……終わったのか?」
「いや、この魔法には、一つ、必要な材料があったのを思い出した。
今、取ってくるから待ってておくれ。
なぁに、すぐに戻って来る。」
「そうか…じゃ、早く頼むぞ。」
「あぁ、すぐ戻る…」
そう言って扉の方へ歩き出したグレースは不意に歩みを止める。
「どうかしたのか?」
「おまえさん、ねずみは好きかい?」
グレースはダルシャに背を向けたまま、そう尋ねた。
「ねずみ…?
特に好きでも嫌いでもないが…ねずみがどうかしたのか?」
「いや…なんでもない……」
グレースはそのまま部屋を後にした。
(……おかしなことを尋ねる奴だ…)
ーーーその後、いつまで待ってもグレースは戻って来なかった。
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