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故郷へ
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*
「それじゃあ、行って来る。」
「ジャネット…赤ちゃんが生まれたら、ぜひ、連れて来てね!」
次の日、五人は屋敷に戻り、そのまた次の日にはセリナがエルフの里に戻って行った。
エルフの里までは、ダルシャがセリナに同行する。
エリオットは、別荘から直接故郷に戻ったと伝えられた。
ラスターは、屋敷に戻るなり、仕事の段取りにとりかかった。
ジャネットは素直に、医師の診断を受け、子供が順調に育っていることがわかった。
*
(エリオット……どうしてるかなぁ…?)
広い庭に寝転がりながら、フレイザーは去って行った友のことを考えていた。
転校して来てからずっと仲の良かったエリオット…
ここに来て、その絆はさらに深まり、そして、永遠の別れが訪れた。
(びっくりしただろうな。
あいつ……一人で大丈夫かな?)
「フレイザー…こんな所にいたのか。」
「あぁ、ジャネット……」
ジャネットは、フレイザーの隣にゆっくりと腰を降ろす。
「またエリオットのこと考えてたのか?」
「え…いや…別に……」
「隠すなよ!」
ジャネットの拳がフレイザーのみぞおちに入った。
「い、痛いじゃないか。」
ジャネットは、フレイザーの抗議に謝りもせずくすっと笑い、フレイザーと同じように寝転んだ。
「仕事の方はうまくいってるのか?」
「うまくいってるとは言い難いけどな。
ラスターは必死だし、イリアスさんやリュシーさんも間に入ってくれてるから、少しずつ話を聞いてくれる人は増えてるって感じかな。
ま、ラスターも一筋縄じゃいかないってことは最初からわかってたみたいだから、ぼちぼちやっていくしかないな。」
「……そうか。大変そうだな。
やっぱり私も明日からいこうか?」
フレイザーは、指でジャネットの額を弾く。
「いてっ!」
「そのことは何度も話しただろ。
子供が生まれるまでは仕事はしないって!
だいたい、今の仕事はいろいろと問題が多いんだ。
なにかあったらどうする!?
良いか?今のお前の仕事は……」
「ちゃんと栄養を採って、元気な子供を産むこと。
はいはい、わかってますよ。」
「わかってたら、その話はしないこと。」
「はいはい。」
ジャネットのぞんざいな返事に、フレイザーは苦笑する。
「……私……昔、占い師の婆さんにおかしなことを言われたんだ……」
空を見上げながら、ジャネットは急に独り言のように呟いた。
「へぇ…何て言われたんだ?」
ジャネットの顔をのぞきこみながら、フレイザーが問い返す。
「聞きたいか?」
「……まぁな。」
「……それは……内緒だ。」
「なんだ、そりゃ!?」
怪訝な顔をするフレイザーに、ジャネットは大きな口を開けて豪快に笑った。
~fin.
「それじゃあ、行って来る。」
「ジャネット…赤ちゃんが生まれたら、ぜひ、連れて来てね!」
次の日、五人は屋敷に戻り、そのまた次の日にはセリナがエルフの里に戻って行った。
エルフの里までは、ダルシャがセリナに同行する。
エリオットは、別荘から直接故郷に戻ったと伝えられた。
ラスターは、屋敷に戻るなり、仕事の段取りにとりかかった。
ジャネットは素直に、医師の診断を受け、子供が順調に育っていることがわかった。
*
(エリオット……どうしてるかなぁ…?)
広い庭に寝転がりながら、フレイザーは去って行った友のことを考えていた。
転校して来てからずっと仲の良かったエリオット…
ここに来て、その絆はさらに深まり、そして、永遠の別れが訪れた。
(びっくりしただろうな。
あいつ……一人で大丈夫かな?)
「フレイザー…こんな所にいたのか。」
「あぁ、ジャネット……」
ジャネットは、フレイザーの隣にゆっくりと腰を降ろす。
「またエリオットのこと考えてたのか?」
「え…いや…別に……」
「隠すなよ!」
ジャネットの拳がフレイザーのみぞおちに入った。
「い、痛いじゃないか。」
ジャネットは、フレイザーの抗議に謝りもせずくすっと笑い、フレイザーと同じように寝転んだ。
「仕事の方はうまくいってるのか?」
「うまくいってるとは言い難いけどな。
ラスターは必死だし、イリアスさんやリュシーさんも間に入ってくれてるから、少しずつ話を聞いてくれる人は増えてるって感じかな。
ま、ラスターも一筋縄じゃいかないってことは最初からわかってたみたいだから、ぼちぼちやっていくしかないな。」
「……そうか。大変そうだな。
やっぱり私も明日からいこうか?」
フレイザーは、指でジャネットの額を弾く。
「いてっ!」
「そのことは何度も話しただろ。
子供が生まれるまでは仕事はしないって!
だいたい、今の仕事はいろいろと問題が多いんだ。
なにかあったらどうする!?
良いか?今のお前の仕事は……」
「ちゃんと栄養を採って、元気な子供を産むこと。
はいはい、わかってますよ。」
「わかってたら、その話はしないこと。」
「はいはい。」
ジャネットのぞんざいな返事に、フレイザーは苦笑する。
「……私……昔、占い師の婆さんにおかしなことを言われたんだ……」
空を見上げながら、ジャネットは急に独り言のように呟いた。
「へぇ…何て言われたんだ?」
ジャネットの顔をのぞきこみながら、フレイザーが問い返す。
「聞きたいか?」
「……まぁな。」
「……それは……内緒だ。」
「なんだ、そりゃ!?」
怪訝な顔をするフレイザーに、ジャネットは大きな口を開けて豪快に笑った。
~fin.
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