763 / 802
故郷へ
62
しおりを挟む
*
楽しい時間はあっという間に過ぎ去った。
毎日、皆であちこちに出かけては、様々な思い出を心に刻み込んだ。
マリエルもずっと別荘に泊まり込み、皆と行動を共にした。
やがて、マキシムが屋敷に戻り、その後、リュシー夫妻も戻ることになった前夜、リュシーはこっそりとジャネットを呼び出した。
「ジャネット……
あのこと、フレイザーにはまだ話せないの?」
「う…うん。
実は、結婚式の日に話そうと思ってたんだけど…フレイザーが……」
「フレイザーがどうかしたの?」
「え…あの……」
いつものフレイザーとは明らかに違うあの異変について話したいという気持ちはありつつも、その気持ちをジャネットはぐっと抑えた。
「……あの日は、フレイザー、早くに寝てしまったんだ。」
「まぁ、そうだったの。
緊張して疲れたのかもしれないわね。」
「その後も、毎日出かけてるから…その……」
そう言って、ジャネットは口籠ったまま俯いた。
「……そんなことじゃないかと思ったわ。
それでね…あなたがどうしても言い出しにくいのなら、これをフレイザーに渡しなさい。」
リュシーは、封緘していない白い封筒をそっと差し出す。
「これは?」
「あなたの妊娠のことが書いてあるわ。
心配だったら読んでみて。」
ジャネットは、中の手紙を取り出し、それに目を通した。
手紙には、ジャネットが妊娠していること、そして、生まれて来る子が獣人だったら…と、彼女がひどく心配していることなどが簡潔に書いてあった。
「ありがとう、リュシーさん。
……でも、これは使えない。」
「使えない?どうして?
私、何かおかしなことでも書いたかしら?」
「そうじゃない。
フレイザーは記憶をなくしてから、文字も読めなくなってるんだ。」
「まぁ、そうだったの…!
じゃあ、あなたが直接話すしかないわね。
頑張るのよ、ジャネット……」
「ありがとう、リュシーさん。」
リュシーの温かな抱擁に、ジャネットは心まで温まってくるのを感じていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去った。
毎日、皆であちこちに出かけては、様々な思い出を心に刻み込んだ。
マリエルもずっと別荘に泊まり込み、皆と行動を共にした。
やがて、マキシムが屋敷に戻り、その後、リュシー夫妻も戻ることになった前夜、リュシーはこっそりとジャネットを呼び出した。
「ジャネット……
あのこと、フレイザーにはまだ話せないの?」
「う…うん。
実は、結婚式の日に話そうと思ってたんだけど…フレイザーが……」
「フレイザーがどうかしたの?」
「え…あの……」
いつものフレイザーとは明らかに違うあの異変について話したいという気持ちはありつつも、その気持ちをジャネットはぐっと抑えた。
「……あの日は、フレイザー、早くに寝てしまったんだ。」
「まぁ、そうだったの。
緊張して疲れたのかもしれないわね。」
「その後も、毎日出かけてるから…その……」
そう言って、ジャネットは口籠ったまま俯いた。
「……そんなことじゃないかと思ったわ。
それでね…あなたがどうしても言い出しにくいのなら、これをフレイザーに渡しなさい。」
リュシーは、封緘していない白い封筒をそっと差し出す。
「これは?」
「あなたの妊娠のことが書いてあるわ。
心配だったら読んでみて。」
ジャネットは、中の手紙を取り出し、それに目を通した。
手紙には、ジャネットが妊娠していること、そして、生まれて来る子が獣人だったら…と、彼女がひどく心配していることなどが簡潔に書いてあった。
「ありがとう、リュシーさん。
……でも、これは使えない。」
「使えない?どうして?
私、何かおかしなことでも書いたかしら?」
「そうじゃない。
フレイザーは記憶をなくしてから、文字も読めなくなってるんだ。」
「まぁ、そうだったの…!
じゃあ、あなたが直接話すしかないわね。
頑張るのよ、ジャネット……」
「ありがとう、リュシーさん。」
リュシーの温かな抱擁に、ジャネットは心まで温まってくるのを感じていた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
レディース異世界満喫禄
日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。
その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。
その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる