夢の硝子玉

故郷へ

５４

「あのドレス、まだありますよね？
あれをジャネットに着てもらったらどうかしら？」

「……リュシー…おまえは時々常識はずれなことを言うな。
あるにはあるが、あれはおまえが一度も着なかったものだぞ。
しかも、わざわざ送り返してまで来た。
そんな縁起の悪いものを、お貸し出来るわけがないだろう？」

「あ、私ならそんなことは別に……」

「いいえ、やっぱりそんなのはだめ。
……そうだわ。私のをお使いなさい。
少し古いものだけど、まだ十分に着られるわよ。」

横から口を挟んだのは、いつもは無口なハリエットだった。



「そうね。
お義姉様のなら幸せになれそうね。
あ、私も今はすごく幸せですけどね。」

「あ！そうだ！
リュシー叔母様！そのドレスでジャネット達と一緒にお式をあげられたらどうかしら？」

「ええっ！」

イリアスとラスターは、セリナの提案に同時に驚きの声を上げた。



「まぁ！それは良い考えね！
私達、結婚式なんてあげてないから、良い記念になるわ！
イリアス、そうしましょう！」

「ば、馬鹿言ってんじゃねぇ！
こ、こんな年になって結婚式だなんて……」

「……良いんじゃないか？」

意地悪な笑みを浮かべながら、ラスターが呟いた。



「お、おまえまで何言ってんだ！
だ、第一、昔のリュシーは今よりずっと細かった。
そんな昔のドレスが入るわけないだろ！」

「まぁ失礼ね！
『ずっと』じゃないわ。『少し』よ。
そのくらい、今から頑張ればすぐに入るようになれます！」

「そうか、なら、ドレスが入ったら、結婚式でもなんでも挙げてやらあ！」

「その言葉、忘れないでね！
ここにいる皆が証人ですからね！」