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伝言
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「おそらく、ここのはずだが…」
オズワルドは、踏み台を持って木の傍に近付くと、そこに載って、木箱の中に手を伸ばした。
「……あった!」
木箱から引き抜いた彼の手には、白い封筒が握られていた。
オズワルドは、焦った様子で封を切り、取り出した便箋に目を走らせる。
彼の視線が下がっていく度に、瞳には熱いものがじわじわと溜まっていく。
六人は、そんな彼の様子をただじっと見守るだけだった。
「……そんなもの……」
オズワルドは、瞳に溜まった涙を拭い、便箋を無造作にポケットに仕舞うと、今度は家の横にある苗木の元を堀り始めた。
「オズワルド…私達も手伝おうか?」
「大丈夫だ。もうみつかった。」
彼は茶色く染まった布にくるまれたものを土の中から掘り出した。
「何なんだ?」
オズワルドは、苦い笑みを浮かべながら、それをダルシャの前に差し出した。
「ダルシャ…君にはいろいろとお世話になったね。
これは、そのお礼だ。」
ダルシャは恐る恐るそれを受けとると、慎重に布をはぎとった。
布は幾重にも巻かれていた。
「……これは!」
布の中から顔を出したのは、緑色の願い石だった。
皆の視線がダルシャの手元に集まる。
「信じられないかもしれないが、これは願い石だ。」
「では、レティシアが持っていたのか?」
「そのようだ。僕はそんな話は一言も聞いてなかったけど……」
オズワルドは、どこか覚めた様子でそう答えた。
「どうしたのかしら。
私…少しも気付かなかった…」
セリナは、石に反応を感じなかったことで、酷く落胆した表情を浮かべた。
「しかし、オズワルド……本当に良いのか?こんな大切なものを……」
「大切?
護り人にとって大切なのは巫女だけだ。
そんなもの、何の興味もない。」
「だが、これはレティシアの……」
「レティシアは、あいつらには絶対に渡さないでと書いてはいたが、君にやるなとは書いていない。
……とにかく、家の中で休もう。」
オズワルドは不機嫌な顔で、玄関の扉を開いた。
オズワルドは、踏み台を持って木の傍に近付くと、そこに載って、木箱の中に手を伸ばした。
「……あった!」
木箱から引き抜いた彼の手には、白い封筒が握られていた。
オズワルドは、焦った様子で封を切り、取り出した便箋に目を走らせる。
彼の視線が下がっていく度に、瞳には熱いものがじわじわと溜まっていく。
六人は、そんな彼の様子をただじっと見守るだけだった。
「……そんなもの……」
オズワルドは、瞳に溜まった涙を拭い、便箋を無造作にポケットに仕舞うと、今度は家の横にある苗木の元を堀り始めた。
「オズワルド…私達も手伝おうか?」
「大丈夫だ。もうみつかった。」
彼は茶色く染まった布にくるまれたものを土の中から掘り出した。
「何なんだ?」
オズワルドは、苦い笑みを浮かべながら、それをダルシャの前に差し出した。
「ダルシャ…君にはいろいろとお世話になったね。
これは、そのお礼だ。」
ダルシャは恐る恐るそれを受けとると、慎重に布をはぎとった。
布は幾重にも巻かれていた。
「……これは!」
布の中から顔を出したのは、緑色の願い石だった。
皆の視線がダルシャの手元に集まる。
「信じられないかもしれないが、これは願い石だ。」
「では、レティシアが持っていたのか?」
「そのようだ。僕はそんな話は一言も聞いてなかったけど……」
オズワルドは、どこか覚めた様子でそう答えた。
「どうしたのかしら。
私…少しも気付かなかった…」
セリナは、石に反応を感じなかったことで、酷く落胆した表情を浮かべた。
「しかし、オズワルド……本当に良いのか?こんな大切なものを……」
「大切?
護り人にとって大切なのは巫女だけだ。
そんなもの、何の興味もない。」
「だが、これはレティシアの……」
「レティシアは、あいつらには絶対に渡さないでと書いてはいたが、君にやるなとは書いていない。
……とにかく、家の中で休もう。」
オズワルドは不機嫌な顔で、玄関の扉を開いた。
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