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ポーリシアの老女
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その時、扉を叩く音がして、フレイザーの物思いを覚ました。
「誰だろう!?」
「俺が見て来るよ。」
滅多に人が訪ねて来ることのないサンドラの家……
フレイザーが連れて来た訪問者はジャックとサンドラには見覚えのある小柄な老人だった。
「サンドラ…久し振りだな!」
「……ジェイコブ……」
「ここに橋が架かってるのを見て、びっくりしながら来てみたんだってさ。
あ、エリオットは知らなかったな。
この人が、おばあさんのことを教えてくれたジェイコブさんだ。」
「あぁ、あのジェイコブさんか~
初めまして、ジェイコブさん。
ボク、エリオットです。」
ジェイコブはエリオットの差し出した片手を、微笑みながら握り締めた。
「こんなに長くこの家にいるのは、おまえさんが初めてだな。」
「この子はとても良い子だからね。
それはそうと、ジェイコブ……あんた、昼間っから飲んでるのかい。
酷いにおいだね。」
「わしには酒を飲むことくらいしかないからな。」
「全く……」
サンドラはジェイコブを睨み、眉をひそめた。
「へぇ……家の中はずいぶんと広々としてるんだな……
沼の向こう側から見てた時にはこんなに広いようには見えなかったが…
けっこう綺麗にしてるじゃないか。
うちとはえらい違いだな……」
ジェイコブは部屋の中をきょろきょろと見渡した。
「さっき、そこを通りがかったら沼に橋がかかってるじゃないか。
俺はまた酔っ払って幻でも見てるのかと思ったよ。
だけど、幻なら幻で良い。
沼に落っこちて死ぬだけのことだからな。
そう思って歩き出したら、この橋は幻なんかじゃなくて本物だった。
昨日までこんなものはなかったと思うが……一体、どうなってるんだ!?」
「あんたって人は,本当に馬鹿だね。
もし、それが本当に幻だったらどうすんだい!」
「……俺には、家族もなにもおらん……
死ぬことなんてなんともない。
それに、最後におまえさんに会えたら良い冥土の土産になるからな。」
そう言うと、ジェイコブは苦い笑いに肩を揺らした。
「誰だろう!?」
「俺が見て来るよ。」
滅多に人が訪ねて来ることのないサンドラの家……
フレイザーが連れて来た訪問者はジャックとサンドラには見覚えのある小柄な老人だった。
「サンドラ…久し振りだな!」
「……ジェイコブ……」
「ここに橋が架かってるのを見て、びっくりしながら来てみたんだってさ。
あ、エリオットは知らなかったな。
この人が、おばあさんのことを教えてくれたジェイコブさんだ。」
「あぁ、あのジェイコブさんか~
初めまして、ジェイコブさん。
ボク、エリオットです。」
ジェイコブはエリオットの差し出した片手を、微笑みながら握り締めた。
「こんなに長くこの家にいるのは、おまえさんが初めてだな。」
「この子はとても良い子だからね。
それはそうと、ジェイコブ……あんた、昼間っから飲んでるのかい。
酷いにおいだね。」
「わしには酒を飲むことくらいしかないからな。」
「全く……」
サンドラはジェイコブを睨み、眉をひそめた。
「へぇ……家の中はずいぶんと広々としてるんだな……
沼の向こう側から見てた時にはこんなに広いようには見えなかったが…
けっこう綺麗にしてるじゃないか。
うちとはえらい違いだな……」
ジェイコブは部屋の中をきょろきょろと見渡した。
「さっき、そこを通りがかったら沼に橋がかかってるじゃないか。
俺はまた酔っ払って幻でも見てるのかと思ったよ。
だけど、幻なら幻で良い。
沼に落っこちて死ぬだけのことだからな。
そう思って歩き出したら、この橋は幻なんかじゃなくて本物だった。
昨日までこんなものはなかったと思うが……一体、どうなってるんだ!?」
「あんたって人は,本当に馬鹿だね。
もし、それが本当に幻だったらどうすんだい!」
「……俺には、家族もなにもおらん……
死ぬことなんてなんともない。
それに、最後におまえさんに会えたら良い冥土の土産になるからな。」
そう言うと、ジェイコブは苦い笑いに肩を揺らした。
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