夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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ポーリシアの老女

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「どうした?ジャック。
 話すんじゃなかったのか?」

 「あぁ、今から話す!」

ジャックは立ち上がり、酒瓶を抱えて戻って来ると、それをそのままぐびぐびとラッパ飲みする。
フレイザーはそんなジャックの様子を見守りながら、彼女が話し始めるのをじっと待った。



 「……俺が男達に襲われたことは前にも話したよな。」

 「あ、あぁ…」

 唐突に話された言葉に、フレイザーは小さく頷く。



 「それは……俺だけじゃないんだ。
 俺の母親もそうなんだ……親子揃って、なんて不運なんだろうな。」

ジャックは自嘲めいた笑みを浮かべ、フレイザーから視線を逸らした。



 「そ、そうだったのか……」

 「そして、俺はその時に出来た子供だ。
 無理矢理に犯されて、母さんは俺を身篭った……」

 「……そうか…それは気の毒だったな。
だけど、そんなことなら……」

 「俺の話はまだ終わっちゃいない!」

ジャックは感情的な声を上げたかと思うと、また酒をあおった。
フレイザーはジャックのただならぬ様子に、何も言えないまま、ただ、ジャックの顔をじっとみつめる。



 「ただ犯されただけならまだ良かったさ……
だけど……母さんを孕ませたのは……」

ジャックの顔からは血の気が引き、息は荒く、酒瓶を持つ手が震えていた。



 「ジャック……無理するな。
 言いたくないのならやめておけ。
また、いつか……」

フレイザーは、ジャックの隣に腰を降ろし、その肩をそっと抱いた。



 「やめろ!」

ジャックはその手を振り払い、フレイザーの身体を突き飛ばした。



 「ジャック……」

 「……すまない。
でも……話し終えるまで、あっちにいてくれ。」

 「そうか、わかった……」

フレイザーは言われるままに、向かいのベッドに座り直した。



 「中断させてすまなかったな。
……話を続けてくれ。」

 「フレイザー……
俺の母さんを孕ませたのは……
俺の父親は……」

ジャックは、苦しそうに声を途切れさせながら、一言一言を噛み締めるように話した。



 「…………獣人なんだ……」

 「え……な、なんだって……」

ジャックの思い掛けない告白に、フレイザーは目を丸くしたまま、ただ呆然とジャックの顔をみつめ続けた。

 
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