夢の硝子玉

ポーリシアの老女

９６

「ところで、フレイザー……彼はどういう知り合いなの？
なんで、一緒に行動してるの？」

 「それはな……」

フレイザーは、イリヤと知り合ったいきさつや彼の事情をエリオットに話して聞かせた。



 「そうだったの……それは気の毒だね。
 自分の家に帰りたくても帰れないなんて……それは切ない話だね。」

 「そうなんだよなぁ…だから、俺もなんとかしてやりたいって思ってて……
あいつな、料理が好きらしくって、それで雇ってもらえそうな店を探してみたんだけど、フォスターでは料理人よりも接客の方を募集してる所ばかりでな。
それに、ここだとあいつも明るくしゃべってるけど、他所へ行くとなんだか別人みたいに大人しくなってしまうんだ。
 緊張してしまうのかもしれないな。」

 「そう……彼の料理は本当においしいとは思うけど、雇われたにしてもすぐに料理を作らせてもらえるわけじゃないだろうし、人間関係もうまくやっていかなきゃならないもんね。
……確かにいろいろと難しそうだね。」

 「なぁ……」


 不意に二人の会話に口をはさんだジャックに、二人はジャックの顔をみつめて、次の言葉が放たれるのを待った。



 「イリヤのことなんだけどな……ここをレストランにして、住みこみで働くっていうのはどうだ？
ここには新鮮な野菜や果物の木もある。
だから材料費もずいぶん助かるだろうし、儲けも出るんじゃないか？」

 「えっ！？ここをレストランに…？
いくらなんでもそりゃあ無理だろ。
いや、レストランにすることは出来ると思うぜ。
それに、イリヤの腕も十分あるし住みこみで働けたら最高だけど、でも、こんな辺鄙な所までわざわざ来る奴はいないだろう…」

 「そうだよね。
 裏山を超えて来るのはとても大変だし、舟で沼を渡って来るようにしてもビーンズさんにお金を払わないといけないらしいし、まず、この町自体が寂れた町だから難しいんじゃないかなぁ？」

 「……やっぱり、無理か……」

ジャックは残念そうに深い溜め息を吐き出した。