夢の硝子玉

ポーリシアの老女

９５

「えっと……と、とにかく早くやってしまわなきゃ！
これが済んだら、まだ片付いてない部屋がいくつもあるんだから、そっちを手伝ってもらわなきゃならないし。」

 「え？……そ、そうだな。
こんなにたくさんあるんだから、急いでやってしまわなきゃな。
へたをとったら、綺麗に洗って水気を拭きとってアコラに浸けこむんだよな？」

 「そうだよ。
 砂糖の分量はそこに書いてある通りだからね。」

 「よし、わかった！頑張るぞ！」

エリオットの言葉をきっかけに、二人はその場の雰囲気を変えるべく、懸命に作業に取り組んだ。
ジャックも自分の失言に気付き、少し決まりの悪い顔で二人と同じように作業に没頭した。



 「……それにしても、ここって外から見るよりうんと広いよな。
これも魔法の力なんだろうが、一人で住むには広すぎ……あ……」

 話の途中で、何かを思いついたかのようにフレイザーの言葉が途絶えた。



 「何？どうかしたの？」

 「そうだ、エリオット！
イリヤをここに泊まらせてやってくれないか？」

 「イリヤを……？でも、どうして？」

 「実は、あいつ、あまり金を持ってないんだ。
もうそろそろ底をつきかけてるって言ってた。
わざわざ、この町に来たのも宿賃がフォスターよりずっと安いからなんだ。
ダルシャから預かってる金があるから、あいつの宿賃を出してやる事は出来るけど、あいつ、けっこう気を遣う奴だから……
その点、ここだったら宿屋じゃないんだし、金はかからないだろ？」

 「そう…じゃあ、おばあさんに言ってみるよ。
 部屋はいくつも空いてるし、掃除が済んでる部屋もあるし、おばあさんもきっと駄目だとは言わないと思うよ。」

 「そりゃあありがたい。」

フレイザーは、エリオットからの良い返事ににっこりと微笑んだ。