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ポーリシアの老女
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その後も、サンドラの身の上話は続いた。
サンドラが物心ついた頃にはすでに母親はいなかったのだという。
ずっと父親と二人で暮らし、この町に来たのは、サンドラの母親がここにいると聞いたからだったそうだが、残念ながら二人がここに来た時はすでに母親はいなかった。
「ここに住んでいた魔法使いっていうのが、私の母親だったんだ。
本人から聞いたわけじゃないけどね…それは間違いないと思ってる。
実はね、私の父親はジャーマシーの出身なんだ。
母もそうらしい。
両親については私はよくは知らないんだ。
だけどね…父親が亡くなって、伯母の家に引き取られてから、少しずつわかったんだ。
父親は貴族だった。
しかも、兄弟の中で男は一人だけだった。
だから、きっと魔法使いとの結婚なんて許されなかったんだと思うよ。
きっと、両親は駆け落ちでもしたんじゃないかねぇ…
でも、やっぱりだめだったんだろうね。
詳しい事情はわからないが、きっと父が母のことを諦めなかったんじゃないだろうか。
それで、母はポーリシアに移った。
母はもう二人で一緒に暮らすのは無理だと思ったか、父親に愛想を尽かしたんだろう。
だけど、それでも父は諦めなかった。
ポーリシアまで母を追いかけて行ったんだから。
私は船に乗った記憶もないから、きっと私が生まれてすぐに別れたんじゃないかって思うんだよ。
私達は小さな頃から母親の行方を探していろんな町を転々と渡り歩いた。
そして、ようやく探し当てたと思ったら、母はすでにこの町を離れた後だった。
……当時のことはよく覚えているよ。
父親の落胆ぶりといったら、本当に酷いものだったからね……
でも、必ず母はここに戻って来ると……父はそう言って待ち続け、数年経った頃に急な病で死んでしまった。
今、考えてみれば、本当に哀れな人だよ…
あんなに一途に母親を愛し続けるなんてね……」
「……そうだったの…そんなことが……
大変だったんだね。」
「大変なことなんてなかったよ。
子供には大人の事情なんてわからないから、旅をすることも少しも苦にはならなかった。
行く先々でそれなりに楽しいこともあったからね。
それに……一度っきりだったけど……私はここでとうとう母親に出会ったんだ。」
「えっ!?お母さんに……」
サンドラは、何も言わずただ深く頷いた。
サンドラが物心ついた頃にはすでに母親はいなかったのだという。
ずっと父親と二人で暮らし、この町に来たのは、サンドラの母親がここにいると聞いたからだったそうだが、残念ながら二人がここに来た時はすでに母親はいなかった。
「ここに住んでいた魔法使いっていうのが、私の母親だったんだ。
本人から聞いたわけじゃないけどね…それは間違いないと思ってる。
実はね、私の父親はジャーマシーの出身なんだ。
母もそうらしい。
両親については私はよくは知らないんだ。
だけどね…父親が亡くなって、伯母の家に引き取られてから、少しずつわかったんだ。
父親は貴族だった。
しかも、兄弟の中で男は一人だけだった。
だから、きっと魔法使いとの結婚なんて許されなかったんだと思うよ。
きっと、両親は駆け落ちでもしたんじゃないかねぇ…
でも、やっぱりだめだったんだろうね。
詳しい事情はわからないが、きっと父が母のことを諦めなかったんじゃないだろうか。
それで、母はポーリシアに移った。
母はもう二人で一緒に暮らすのは無理だと思ったか、父親に愛想を尽かしたんだろう。
だけど、それでも父は諦めなかった。
ポーリシアまで母を追いかけて行ったんだから。
私は船に乗った記憶もないから、きっと私が生まれてすぐに別れたんじゃないかって思うんだよ。
私達は小さな頃から母親の行方を探していろんな町を転々と渡り歩いた。
そして、ようやく探し当てたと思ったら、母はすでにこの町を離れた後だった。
……当時のことはよく覚えているよ。
父親の落胆ぶりといったら、本当に酷いものだったからね……
でも、必ず母はここに戻って来ると……父はそう言って待ち続け、数年経った頃に急な病で死んでしまった。
今、考えてみれば、本当に哀れな人だよ…
あんなに一途に母親を愛し続けるなんてね……」
「……そうだったの…そんなことが……
大変だったんだね。」
「大変なことなんてなかったよ。
子供には大人の事情なんてわからないから、旅をすることも少しも苦にはならなかった。
行く先々でそれなりに楽しいこともあったからね。
それに……一度っきりだったけど……私はここでとうとう母親に出会ったんだ。」
「えっ!?お母さんに……」
サンドラは、何も言わずただ深く頷いた。
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