夢の硝子玉

ポーリシアの老女

７３

＊



 「それで…魚の加工場っていうのはなんとかなりそうなのか？」

 各々ベッドに横になりながら、フレイザーとジャックは他愛ない会話を交わしていた。



 「さぁ、どうだろうな…
加工の方は女の人がほとんどだったから、難しいんじゃないか？
それに、家がないってのはどう考えても困るだろう。」

 「……じゃ、やっぱりダルシャに頼るしかないか。」

 「そうだな。
それで、フォスターから船でどこか賑やかな町に行って……」

 「でも、そこでもみつからなかったらどうするんだ？」

 「それは……」

フレイザーは、返す言葉に詰まった。



 「どうにか、実家に戻れないものなのかな。
だって、イリヤも実の子供なんだし……」

 「でも、奴はもう大人だ。
 居間の他に二部屋しかない家で、大人が三人と子供が四人暮らすのは大変だと思うぞ。
それに、もしもこの先両親の間に子供でも出来たら……」

 「そういえば、小さな子供がいるってことは奥さんはまだ若いってことだもんな。
じゃあ、その可能性は高いか……」

 二人は、イリヤの今後についての良い案が思い浮かばず、同じように押し黙った。



 「……そりゃあそうと、セリナがおまえのことを心配してたぞ。」

 長い沈黙の中、ジャックが眠りに就こうとした頃、フレイザーが急に思い出したようにぽつりと口を開いた。



 「え……？あ、あぁ……」

 「セリナと何か約束してるんだってな？」

 「ま、まぁな……」

ジャックはごく曖昧にそう答え、フレイザーもそれを深く追求することはなかった。



 「セリナがエリオットのことも気になるし、近いうちにこっちに来るって言ってたけど……
それにしても、本当にエリオットの奴…どうなってるんだろう？」

 「そうだな…
いくら婆さんが怖い奴でも、殺したりはしないだろうし、多分、なかなか願い石の話をしてもらえないんじゃないだろうか？」

 「そうかもしれないなぁ……
あいつ、強情な所があるから、なにがなんでも情報を聞きこもうとして頑張ってるのかもしれないな。
……でも、まさか、こき使われて体調を壊したりしてないだろうな…？
あぁ、なんだか心配になって来た……ジャック…エリオットは大丈夫だろうか？」

 「……きっと大丈夫さ。」



そう言って、ジャックはフレイザーに背中を向けた。