夢の硝子玉

ポーリシアの老女

６８

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 「イリヤも気の毒だよなぁ…
本当は家にいたいだろうに……」

 「……そうだな。」

ジャックは、自分の打ち明け話をしたいと思いつつ、フレイザーが話すことはさっきからずっとイリヤのことばかりで、話すタイミングをなかなか掴めないでいた。



 「フォスターは港町だから、力仕事だったらいくらでもあるだろうになぁ…
頭も良くないって言ってたけど、そう馬鹿ってわけじゃないから……やっぱり事務みたいなことが良いのかな？
 人付き合いも得意じゃないとは言ってたけど、そう苦手って感じもしないよな。
 俺達ともすぐに打ち解けたしさ。」

 「そりゃあ、まぁ、俺達とは年も近いし、利害関係も上下関係もないからな。」

イリヤのことばかり話すフレイザーにジャックはいささかうんざりし、口から飛び出る言葉もつっけんどんなものに変わった。



 「出来るなら、レストランとか……あ、宿屋でも良いな。
 宿屋なら住みこみもさせてもらえるんじゃないか！？
そしたら住む所の心配もいらないし…！」

 「そんなにあいつのことが気になるなら、フォスターまでついていってやれば良いじゃないか。」

 「なるほど……そうだな！
ここにいても退屈だし、じゃあ、ちょっと出かけて来て良いか？
 夕飯までには戻る。」

ジャックの不機嫌な様子にも気付かず、フレイザーはジャックの提案に素直に頷いた。



 「勝手にしろよ。」

 本当はフレイザーの足のことが気になりながらも、今までの話の流れから苛々が募り、ジャックは感情的にそう答えた。



 「じゃ、もしエリオットが戻って来たらよろしく頼むな。
あいつもそろそろ戻って来る頃だと思うから。
……どうだろう？
 何か、願い石の情報は聞きこめたかな？」

 「エリオットは、聞けるまではきっと戻って来ないさ。」

 「……そうだよな。
あいつは責任感が強いところがあるから……
でも、ばあさんの苛めが酷かったら、そう長くは耐えられないだろう。
あいつ……大丈夫かなぁ……」

ジャックは何も答えず、毛布をひっぱって頭からすっぽりとかぶり、寝たふりを決めこんだ。