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ポーリシアの老女
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「すまなかったね…疲れただろう?」
エリオットが泉まで水を汲みに行ったおかげで、二人は温かいお茶を飲むことが出来、サンドラはその事を素直に労った。
「ううん、そんなことなんでもないよ。
でも、お婆さん……どうしてこんな不便な生活してるの?
どうして、井戸を直す人は来てくれないの?」
「そんなこと…当たり前じゃないか。
私には金がない。
しかも、こんな辺鄙な所だ。
裏山を通って来ると、ずいぶんと時間がかかる。
かといって、ビーンズの舟を借りたら金を取られる。
誰が好き好んできてくれるもんか…
……以前はね…フォスターのゴア神父がとても良くしてくれたんだ。
私も今ほど身体が弱ってなかったけど、それでも週に一度はここへ来て、いろいろなことを手伝ってくれた。
だけど、ゴア神父が他の町に移ってからは、もうだめだね。
後任の神父は最初はいやいや来てくれてたけど、一度口喧嘩をしてからは一切来なくなったよ。
あいつは、ゴア神父とは比べものにならないへぼ神父だ!」
サンドラは興奮した様子でそう言うと、拳でテーブルを叩き付けた。
「そうだったの…
……え?それじゃあ、食べるものはどうしてるの!?」
「うちの横に、小さな畑があるのを見たかい?」
「うん。ちらっと見たよ。
でも、お婆さん…その足じゃ畑仕事なんて……
……あれ?でも、あの畑…何か野菜が実ってたみたいな……」
エリオットは、さっき見た風景をおぼろげに頭に思い浮かべる。
「そうだよ。あれは特別な畑でね。
一切、手を加えなくても野菜が実るし、放っておいても腐ったりしない。
収穫すれば、次の日にはまた新たな野菜が実るんだよ。
それと、畑の傍の果物の木々も同じだよ。
だけど、台所の有様を見ただろう?
いくら材料があったって、あんな状態だから、最近では料理も出来やしない。
仕方なく、そのまま食べたり、ただ炙って食べたりしてるよ。」
エリオットは、サンドラの話を聞きながら、おそらくその特別な畑や木は以前の住人の魔法使いが残したものだろうと推測した。
「すまなかったね…疲れただろう?」
エリオットが泉まで水を汲みに行ったおかげで、二人は温かいお茶を飲むことが出来、サンドラはその事を素直に労った。
「ううん、そんなことなんでもないよ。
でも、お婆さん……どうしてこんな不便な生活してるの?
どうして、井戸を直す人は来てくれないの?」
「そんなこと…当たり前じゃないか。
私には金がない。
しかも、こんな辺鄙な所だ。
裏山を通って来ると、ずいぶんと時間がかかる。
かといって、ビーンズの舟を借りたら金を取られる。
誰が好き好んできてくれるもんか…
……以前はね…フォスターのゴア神父がとても良くしてくれたんだ。
私も今ほど身体が弱ってなかったけど、それでも週に一度はここへ来て、いろいろなことを手伝ってくれた。
だけど、ゴア神父が他の町に移ってからは、もうだめだね。
後任の神父は最初はいやいや来てくれてたけど、一度口喧嘩をしてからは一切来なくなったよ。
あいつは、ゴア神父とは比べものにならないへぼ神父だ!」
サンドラは興奮した様子でそう言うと、拳でテーブルを叩き付けた。
「そうだったの…
……え?それじゃあ、食べるものはどうしてるの!?」
「うちの横に、小さな畑があるのを見たかい?」
「うん。ちらっと見たよ。
でも、お婆さん…その足じゃ畑仕事なんて……
……あれ?でも、あの畑…何か野菜が実ってたみたいな……」
エリオットは、さっき見た風景をおぼろげに頭に思い浮かべる。
「そうだよ。あれは特別な畑でね。
一切、手を加えなくても野菜が実るし、放っておいても腐ったりしない。
収穫すれば、次の日にはまた新たな野菜が実るんだよ。
それと、畑の傍の果物の木々も同じだよ。
だけど、台所の有様を見ただろう?
いくら材料があったって、あんな状態だから、最近では料理も出来やしない。
仕方なく、そのまま食べたり、ただ炙って食べたりしてるよ。」
エリオットは、サンドラの話を聞きながら、おそらくその特別な畑や木は以前の住人の魔法使いが残したものだろうと推測した。
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