459 / 802
ポーリシアの老女
44
しおりを挟む
*
「じゃあ、エリオット、頑張れよ!
何かあったらすぐに駆け付けるからな…」
「あ、ありがとう。」
両手を握り締めるラスターに、苦笑いを浮かべたエリオットが小さく頷く。
「では、フレイザー…よろしく頼んだぞ。」
「あぁ、心配ない。」
宿にはすでに一組の宿泊客があり、部屋の広さも狭いことから、ラスターとダルシャは再びフォスターの町に戻ると言い出し、四人はラスター達を街道まで見送りに向かった。
「……近いとはいえ、往復は大変ね。」
離れて歩くダルシャとラスターの後姿をみつめながら、セリナがぽつりと呟いた。
「あ~あ……あいつら、フォスターに着くまで何も話さないつもりなのかな。
……エリオットがラスターと一緒の部屋でも良いっていってやったら、あいつも今夜は泊まっていっただろうにな。」
「……フレイザー……」
いつもよりずっと低い声で呼ばれたフレイザーが振り向くと、眉間に皺を寄せたエリオットが厳しい視線で睨んでいた。
「じょ、冗談だって!
あ…エリオット、夕飯まで休んだらどうだ?
明日からは忙しくなりそうだし、フォスターから歩いて来たんだから疲れてるんじゃないか?」
俺…ジェイコブさんにエリオットのことを頼んで来るよ。」
「あ、俺も行くよ…」
足早に去っていくフレイザーとジャックを見送りながら、セリナはエリオットの肩を優しく叩く。
「宿に戻りましょう。」
「うん、そうだね。」
宿への道を二人は方を並べてゆっくりと歩く。
「……ねぇ、エリオット…」
「何?」
「さっき、フレイザーと二人でなにか話してたでしょ?」
「えっ…セリナ、知ってたの?」
エリオットは足を停め、驚いて丸くなった瞳をセリナに向けた。
「……ジャックがね…木の影であなた達のことをじっと見てたから…」
「ジャックが……」
「実はね…今までにもあったのよ。
きっと、フレイザーとあなたのことが気になって仕方ないのね。」
「誤解だよ!ボクとフレイザーはそんなんじゃないんだよ。
ボクは本当にフレイザーのことをそんな風に考えてはいないんだ。
フレイザーだって、もちろんそうだよ。」
声を荒げ、真剣な目で訴えるエリオットに、セリナは優しく微笑んだ。
「私は信じてるわ。
だけど、ジャックは……わかるでしょ?
ねぇ、フレイザーとの話は皆の前では話せないようなことなの?
……けっこう二人っきりで話してることが多いわよね?」
「……それは……今は話せないけど、いつか必ず話すから……
だから、セリナ……それまでボクのことを信じて。」
「……わかったわ。」
(それは、多分、ボク達が元の世界に戻る時だけど…)
エリオットは、その時がそう遠くはないことを予感していた。
「じゃあ、エリオット、頑張れよ!
何かあったらすぐに駆け付けるからな…」
「あ、ありがとう。」
両手を握り締めるラスターに、苦笑いを浮かべたエリオットが小さく頷く。
「では、フレイザー…よろしく頼んだぞ。」
「あぁ、心配ない。」
宿にはすでに一組の宿泊客があり、部屋の広さも狭いことから、ラスターとダルシャは再びフォスターの町に戻ると言い出し、四人はラスター達を街道まで見送りに向かった。
「……近いとはいえ、往復は大変ね。」
離れて歩くダルシャとラスターの後姿をみつめながら、セリナがぽつりと呟いた。
「あ~あ……あいつら、フォスターに着くまで何も話さないつもりなのかな。
……エリオットがラスターと一緒の部屋でも良いっていってやったら、あいつも今夜は泊まっていっただろうにな。」
「……フレイザー……」
いつもよりずっと低い声で呼ばれたフレイザーが振り向くと、眉間に皺を寄せたエリオットが厳しい視線で睨んでいた。
「じょ、冗談だって!
あ…エリオット、夕飯まで休んだらどうだ?
明日からは忙しくなりそうだし、フォスターから歩いて来たんだから疲れてるんじゃないか?」
俺…ジェイコブさんにエリオットのことを頼んで来るよ。」
「あ、俺も行くよ…」
足早に去っていくフレイザーとジャックを見送りながら、セリナはエリオットの肩を優しく叩く。
「宿に戻りましょう。」
「うん、そうだね。」
宿への道を二人は方を並べてゆっくりと歩く。
「……ねぇ、エリオット…」
「何?」
「さっき、フレイザーと二人でなにか話してたでしょ?」
「えっ…セリナ、知ってたの?」
エリオットは足を停め、驚いて丸くなった瞳をセリナに向けた。
「……ジャックがね…木の影であなた達のことをじっと見てたから…」
「ジャックが……」
「実はね…今までにもあったのよ。
きっと、フレイザーとあなたのことが気になって仕方ないのね。」
「誤解だよ!ボクとフレイザーはそんなんじゃないんだよ。
ボクは本当にフレイザーのことをそんな風に考えてはいないんだ。
フレイザーだって、もちろんそうだよ。」
声を荒げ、真剣な目で訴えるエリオットに、セリナは優しく微笑んだ。
「私は信じてるわ。
だけど、ジャックは……わかるでしょ?
ねぇ、フレイザーとの話は皆の前では話せないようなことなの?
……けっこう二人っきりで話してることが多いわよね?」
「……それは……今は話せないけど、いつか必ず話すから……
だから、セリナ……それまでボクのことを信じて。」
「……わかったわ。」
(それは、多分、ボク達が元の世界に戻る時だけど…)
エリオットは、その時がそう遠くはないことを予感していた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
かつてダンジョン配信者として成功することを夢見たダンジョン配信者マネージャー、S級ダンジョンで休暇中に人気配信者に凸られた結果バズる
竜頭蛇
ファンタジー
伊藤淳は都内の某所にあるダンジョン配信者事務所のマネージャーをしており、かつて人気配信者を目指していた時の憧憬を抱えつつも、忙しない日々を送っていた。
ある時、ワーカーホリックになりかねていた淳を心配した社長から休暇を取らせられることになり、特に休日に何もすることがなく、暇になった淳は半年先にあるS級ダンジョン『破滅の扉』の配信プロジェクトの下見をすることで時間を潰すことにする.
モンスターの攻撃を利用していたウォータースライダーを息抜きで満喫していると、日本発のS級ダンジョン配信という箔に目が眩んだ事務所のNO.1配信者最上ヒカリとそのマネージャーの大口大火と鉢合わせする.
その配信で姿を晒すことになった淳は、さまざまな実力者から一目を置かれる様になり、世界に名を轟かす配信者となる.
転生少女は元に戻りたい
余暇善伽
ファンタジー
平凡な社会人だった飛鳥はある日友人と共に異世界に飛ばされてしまう。しかも友人は少年になっていたのに対して、自分はなぜか少女になっていた。慣れない少女の体や少女としての扱いに動揺したり、異世界での環境に流されながらも飛鳥は元の世界、元の体に戻るべく奮闘していく。
妾の子だった転生勇者~魔力ゼロだと冷遇され悪役貴族の兄弟から虐められたので前世の知識を活かして努力していたら、回復魔術がぶっ壊れ性能になった
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
◆2024/05/31 HOTランキングで2位 ファンタジーランキング4位になりました! 第四回ファンタジーカップで21位になりました。皆様の応援のおかげです!ありがとうございます!!
『公爵の子供なのに魔力なし』
『正妻や兄弟姉妹からも虐められる出来損ない』
『公爵になれない無能』
公爵と平民の間に生まれた主人公は、魔力がゼロだからという理由で無能と呼ばれ冷遇される。
だが実は子供の中身は転生者それもこの世界を救った勇者であり、自分と母親の身を守るために、主人公は魔法と剣術を極めることに。
『魔力ゼロのハズなのになぜ魔法を!?』
『ただの剣で魔法を斬っただと!?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ……?』
『あいつを無能と呼んだ奴の目は節穴か?』
やがて周囲を畏怖させるほどの貴公子として成長していく……元勇者の物語。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる