夢の硝子玉

ポーリシアの老女

４０

「どうしたんだ？エリオット…」

 「……ボク……ボクが行くよ。」

エリオットは、俯き加減に小さな声で囁いた。



 「エリオット…無理しなくて良いのよ、私が行くから…」

 「ううん、ボクがいく。
セリナに何かあったら大変だし、それに魔法使いのことを信用してるのなら、ボクには心を開いてくれるかもしれないし…」

 「馬鹿ね、何もあるわけないじゃない。
せいぜいこき使われるくらいのことだわ。
それに、本当にそのお婆さんが魔法使いを信用してるかどうかもわからないのよ、
あくまでも推測なんだから…」

 「でも…ボクも話を聞いてたら、ジャックの推測は当ってるような気がするんだ。
だから、ボクが……
お願い…！ボクに行かせて…！」

 真っ直ぐにセリナを見据え、エリオットは熱く懇願した。



 「……でも……」

 「セリナ…ここはエリオットに任せよう。
 私も、今回はエリオットの方が適任だと思う。
……第一、セリナは、あまり家事が得意じゃないだろう？」

 「酷いわ、ダルシャ。
そりゃあ、確かに得意ではないけど…それは旅ばかりしててあまり家事をする機会がなかっただけ。
 出来ないってわけじゃないわ。」

ダルシャを厳しい視線で睨むセリナの肩を、フレイザーが優しく叩く。



 「その通りだ。わかってるって。
セリナは働き者だし、よく気がつくもんな。
 家事だってうまく出来ないわけはない。
……だが、今回はエリオットに任せよう。
 家事がどうこうって問題じゃないんだ。
 魔法使いだってことが重要なんだ。
きっと、そのことだけでエリオットは気に入られるって思うんだ。
……だから……エリオット、よろしく頼んだぜ！
 頑張ってくれよ！」

 「う、うん…」

エリオットは躊躇いがちに頷き、セリナもそれ以上は何も言わず、結局、サンドラの所にはエリオットが行く事で話は決まった。