夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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ポーリシアの老女

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「駄目だよ、そんなこと…!
そんな風に希望を失って生きちゃいけない!
そんなの…哀しすぎるよ…」

 瞳を潤ませたエリオットが、ラスターの手を堅く握り締め、ラスターはその手をさっと振り払う。



 「おまえは何もわかってない。
 夢や希望なんて、俺達に叶うもんじゃないんだ。
そんなものが叶えられるのは、元々、幸せな者達だけだ。
きっと生まれる前から、その者が幸せか不幸なのかは決まってやがるんだ。
ダルシャみたいに何不自由ない貴族の家に生まれる奴は、幸せな人間として生まれて来た奴だ。
 俺やジャックは、それとは逆にこの世で苦しむために生まれて来たんだ。
 夢なんて見るだけ馬鹿らしい…
ちょっとうまくいきそうに思えても、必ずそれをぶち壊す奴が出て来る…
精一杯頑張って積み上げたものは、必ず誰かに破壊されるんだ。
そんなことを繰り返すうちに、俺はようやく悟ったよ。
それが俺の運命なんだって…
だから、夢なんて最初から見なきゃ良いんだって…
そうすりゃ、悲しむこともうちひしがられることもない…」

 自嘲めいた微笑みは、ラスターの顔を酷く哀しいものに見せた。
エリオットは、そんなラスターの横顔をただただみつめるばかりで、その唇は何も発しない。



 「そうだな……確かに私と君の生まれ育った境遇は大きく違う。
 今まで君が味わって来た苦労も、私には理解出来ないようなことなのかもしれない。
……しかし、君はそれで良いのか?
 悔しくはないのか!?」

 「な、なんだと!?
そんなこと…悔しいに決まってんだろ!
だけど、どんなに頑張ったって、それを変えることなんて出来ないんだ!
運命に逆らうことなんて出来ることじゃないんだ!」

ラスターは声を荒げ、ほとばしる感情をダルシャにぶつけた。
エリオットの鼓動が速くなる程のラスターの激昂ぶりに、ダルシャは意外にも失笑を返した。
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