夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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ポーリシアの老女

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「ラスター…忘れたの?
ジャックは、願い石をみつけて男になろうとしてるのよ。
それは、フレイザーへの想いを諦めるためよ。
ジャックはね……自分の過去のことで希望を持てないでいるの。
 自分のことを誰にも愛される資格のない人間だと思いこんでる…」

 「……そりゃあ、俺だってあいつのことは気の毒だと思ってるさ…
だけど、セリナ…世間はそう甘いもんじゃないぜ。
もしも…あの二人がうまくいって愛し合うようになったとしてもだな…
フレイザーの記憶が戻り、あいつを両親に紹介したら…フレイザーの両親はあいつの過去を快く許すと思うか?」

 「そんなこと、黙っていれば良いだけではないか。」

 横から口を挟んだダルシャを、ラスターはきつい眼差しで睨み付けた。



 「だから、あんたは甘いって言うんだよ。
 隠し事っていうのはな、酷く心が痛むもんなんだ。
もしも、フレイザーの両親が良い人達であいつにも優しくしてくれたら…そのことで、あいつは秘密を持ってることになおさら苦しむはずだ。
フレイザーに対しても後ろめたさを感じるだろう…
優しくされればされる程、大切にされればされる程、あいつの心の傷は痛むんだ。
……過去は絶対に消せない…過去に犯した間違いを許せる奴なんて、滅多にいない…」

いつもより押さえた声でそう話すラスターの表情は、とても哀しげなものだった。



 「だが、ラスター……元はといえばジャックは被害者なのだぞ。
その後のことは彼女の間違いだとしても、元々は…」

 「そんなことは関係ない!
みんなが見るのは悪い部分だけなんだ!
……俺だって……あんな親の元に生まれたのも…あんな町で育ったのも俺の意志なんかじゃない!
だけど、そんなこと、誰も考えちゃくれない!
あの町の人間は、魔物以下なんだ。
 薄汚くて、手癖が悪く、頭が悪くて強暴で…みんな、そう思ってやがる。
どれほど真面目に働いてたって、あの町の者だとバレた途端に、周りの態度はがらりと変わるんだ。
 今の俺のことなんて誰も見ちゃくれない!
あの町の出身だということしか考えない!
……だから、俺にはあいつの気持ちがわかる。
そうだ…早いとこ、諦めた方が良いんだ。
フレイザーのことを想ったところで、きっとうまくなんていくはずない。
いつかはあいつの過去があいつの邪魔をする。
 幸せになんてなれるはずがないんだ。
さっぱりと男になっちまった方が、きっとあいつもこの先楽に生きていけると思うぜ。」

 
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