夢の硝子玉

ポーリシアの老女

３０

＊



 「セリナ、酷いじゃないか！
 俺達、昨夜は心配で一睡も出来なかったんだぞ！」

セリナの告白に、ラスターは顔を赤くして怒りをぶちまけた。



 「本当にごめんなさい。
 反省してます。
これからはこんなことはもうしないわ。」

 神妙な顔で謝るセリナに、ラスターは小さく舌を打って顔を背けた。



 「ラスター、セリナも十分反省していることだし、許してやってくれ。」

 「セリナ、そもそもなんでそんなことしたんだよ！」

 「それは……」

セリナは口篭もりながら、助けを求めるようにダルシャの瞳をみつめる。
ダルシャは少し考えて、やがて、ゆっくりと頷いた。



 「ラスター…それは、フレイザーの気持ちを確かめるためだ。」

 「フレイザーの気持ちを…？
そりゃ、一体、どういうことなんだ？」

その質問に、ダルシャとセリナは再びお互いの視線を交わす。



 「……実はな…
ジャックは、フレイザーのことを愛している。
 私やセリナは以前からそのことに気付いていた。
だが、フレイザーは鈍感で全くそのことに気付いておらず、セリナはずっとそのことでもやもやしていたんだな。
そして、ついにフレイザーにそのことを話した。
しかし、フレイザーはそう言われても自分自身の気持ちがわからないという…
そこで、セリナはフレイザーの気持ちを確かめるべく…そんなことをしてしまったというわけなんだ。」

ダルシャの話に、セリナは黙って頷いた。



 「なんだって…！
あいつがフレイザーのことを…
 ……確かに、あいつはフレイザーにべったりだったし、慕ってるのはわかってたけど…その時はあいつが女だなんて知らなかったから…
そうか、そうだったのか、それで……
でも、好かれてることがわかっててそれに応えてやらないっていうのは、フレイザーはあいつのことが好きじゃないんじゃないか？
たとえば……ほら…フレイザーはあいつの過去のことにこだわってるとか…」

ラスターは少し言いにくそうに声をひそめてそう話した。