夢の硝子玉

ポーリシアの老女

３

＊



 「ジャック……」



ジャックの長い話が終わり、エリオットが小さな声でジャックの名を呼んだ後、部屋の中は重苦しい沈黙に包まれた。



 「……ごめんな、不愉快な話を聞かせて……
でも…なんか今頃になって、二人に黙ってるのが悪いことのように思えたんだ。」

 「じゃ…じゃあ……
あんた達はこの話もすでに知ってたのか？」

 「つい先日、船の中で話した。」



セリナとダルシャは、それを聞いて同時に頷く。



 「そうだったの…
セリナの様子がなんだかおかしいって思ってたけど…
そんなことがあったんだ…」

 「隠しててごめんなさいね、エリオット…
ジャック…辛い話をよく話せたわね…
もしかして、あなた…これから女性として生きていくことを決心したの？
それで、こんなことを…」

セリナの言葉に、ジャックは苦い笑いを浮かべながらゆっくりと首を振る。



 「そうじゃない…
その逆だな。
 俺は、新しく生まれ変わるためにも、自分のことをしっかりと受け止めたかった。
だから、皆に話した。
こんな話、聞きたくなかったかもしれないけど…俺の身勝手を許してくれ。」

 「ジャック、そんなことは良いんだけど、新しく生まれ変わるって何？
 一体、どういうことなの？」

エリオットは、不安げな表情でジャックの顔をみつめた。



 「……お蔭様で俺の気持ちはすっきり晴れた。
これで、もう少しの迷いもない。
……俺は、絶対に願い石をみつけてそれで男になる！」



 「えっ！？」

 「男に…？」



 皆の視線が一斉にジャックに集まった。



 「ジャック、あなた、そんなこと本気で言ってるの？」

 「あぁ、もちろん本気だ。
だから、今、あんな話をしたんだ。
 山育ちの愚かなジャネットの人生はもうこれですべておしまいだ。
これからは、俺は本当の男・ジャックとして生きていく。」

 吹っ切れたように晴れ晴れとした顔でそう宣言したジャックとは裏腹に、それが却って皆の心を不安にさせた。