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波に揺られて
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「フレイザーは俺のことなんてなんとも思っちゃいない!
俺に同情してくれてるだけだ。
おかしなことを言うな!」
ジャックはフレイザーの前に立ちはだかり、セリナとダルシャを鋭い視線で睨み付ける。
「ジャック…そんなことないわ。
それに、あなたの気持ちはどうなるの?
あなた、フレイザーのことが好きなんでしょ?」
「そ…それは……」
ジャックの声が急に小さくなり、そのままゆっくりと俯いた。
「……確かに俺はフレイザーが好きだ。
こんなこと、フレイザーには一生言うつもりはなかった。
そんなこと言ったら迷惑になるのはわかってるから…
俺みたいに汚れた女に好きだなんて言われたら、誰だって……
でも、俺は本当になにも望んじゃいない。
俺は……ただ、今まで通りフレイザーと一緒にいられたらそれで十分なんだ。
でも、それさえもいやだと言われたら……俺はフレイザーの傍を離れる覚悟も出来てる。」
「ジャック……」
部屋の中に、なんともいえない気まずい沈黙が広がった。
「じゃ、俺……」
「待ってくれ、ジャック。」
部屋を出ようとしたジャックを、フレイザーの声が引き止めた。
「まぁ、座れよ。」
フレイザーは、座っていた長椅子を少し横にずれ、ジャックの座る場所を空けた。
少し戸惑った様子を見せながらも、ジャックはフレイザーの横に腰を降ろす。
「ジャック…
俺…前にも言った通り、おまえの過去については正直同情してるところはある。
だけど……きっとそれだけじゃない。
セリナに、おまえが、その……俺のことを好きだって聞かされた時…
俺、どうして良いか本当にわからなくなって…それで、おまえと顔を合わせるのが気まずくて、それで、いつも遅くまで部屋に戻らなかった。
ここ数日、ダルシャとおまえが仲良くしてるのを見たら、なんだか俺、すごく苛々して…
ダルシャのことがなんだか頭に来て…
部屋に二人でいると思ったら、たまらない気持ちになった。
……俺、今でも本当に自分の気持ちがわからない。
こんな年しておかしな奴だと思われるかもしれないけど、本当にまだよくわからないんだ。
だけど……きっと、セリナの言う通りなのかもしれない。
だから、ジャック…もう少しだけ待って欲しい。
俺が自分の本心と向き合えるようになるまで…
それと…ジャック……
自分のことを汚れてるなんて言うのはやめろ。
俺はもちろん、セリナやダルシャだってそんなこと思ってない。
おまえがそんな風に言ったら、俺達まで悲しい気分になっちまう。」
「フレイザー……」
ジャックは、溢れそうになる涙をそっと指で拭った。
俺に同情してくれてるだけだ。
おかしなことを言うな!」
ジャックはフレイザーの前に立ちはだかり、セリナとダルシャを鋭い視線で睨み付ける。
「ジャック…そんなことないわ。
それに、あなたの気持ちはどうなるの?
あなた、フレイザーのことが好きなんでしょ?」
「そ…それは……」
ジャックの声が急に小さくなり、そのままゆっくりと俯いた。
「……確かに俺はフレイザーが好きだ。
こんなこと、フレイザーには一生言うつもりはなかった。
そんなこと言ったら迷惑になるのはわかってるから…
俺みたいに汚れた女に好きだなんて言われたら、誰だって……
でも、俺は本当になにも望んじゃいない。
俺は……ただ、今まで通りフレイザーと一緒にいられたらそれで十分なんだ。
でも、それさえもいやだと言われたら……俺はフレイザーの傍を離れる覚悟も出来てる。」
「ジャック……」
部屋の中に、なんともいえない気まずい沈黙が広がった。
「じゃ、俺……」
「待ってくれ、ジャック。」
部屋を出ようとしたジャックを、フレイザーの声が引き止めた。
「まぁ、座れよ。」
フレイザーは、座っていた長椅子を少し横にずれ、ジャックの座る場所を空けた。
少し戸惑った様子を見せながらも、ジャックはフレイザーの横に腰を降ろす。
「ジャック…
俺…前にも言った通り、おまえの過去については正直同情してるところはある。
だけど……きっとそれだけじゃない。
セリナに、おまえが、その……俺のことを好きだって聞かされた時…
俺、どうして良いか本当にわからなくなって…それで、おまえと顔を合わせるのが気まずくて、それで、いつも遅くまで部屋に戻らなかった。
ここ数日、ダルシャとおまえが仲良くしてるのを見たら、なんだか俺、すごく苛々して…
ダルシャのことがなんだか頭に来て…
部屋に二人でいると思ったら、たまらない気持ちになった。
……俺、今でも本当に自分の気持ちがわからない。
こんな年しておかしな奴だと思われるかもしれないけど、本当にまだよくわからないんだ。
だけど……きっと、セリナの言う通りなのかもしれない。
だから、ジャック…もう少しだけ待って欲しい。
俺が自分の本心と向き合えるようになるまで…
それと…ジャック……
自分のことを汚れてるなんて言うのはやめろ。
俺はもちろん、セリナやダルシャだってそんなこと思ってない。
おまえがそんな風に言ったら、俺達まで悲しい気分になっちまう。」
「フレイザー……」
ジャックは、溢れそうになる涙をそっと指で拭った。
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