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波に揺られて
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「フレイザー!」
「あっ!セ…セリナ!」
後ろからぽんと背中を叩かれたフレイザーは、焦った顔でセリナをみつめる。
「……今日もあの二人、朝からべったりね…
深刻な顔して、何を話しているのかしら?
……まさか、ジャック…あのことを…」
「それはないだろう。
あんなこと、普通はなかなか話せない筈だ。」
「そうね…信頼出来る相手じゃないと、あんなこと話せないわよね。
でも、ダルシャはそういう点では信頼出来る人よ。
言ってはいけないことは絶対に言わないし、人を裏切るようなことはしない。
だからこそ、獣人のアルディやカイン、それにあのブライアンも彼のことをとても信頼してるでしょう?」
「そりゃあ、まぁ、そうだけど…」
フレイザー自身もダルシャのことを信頼している部分があり、セリナの言うことに反論出来ないことが不思議と腹立たしく、フレイザーは言葉を濁した。
「話すことでジャックの心が軽くなるのなら、それはきっと悪いことではないと思うわ。
秘密ってとても重い物だから…
だから、身近な人間が共有して軽くしてあげなきゃならないと思うのよ。」
「……俺やセリナに言うだけじゃ足りないっていうのか?」
フレイザーの声が殊更不機嫌なものに変わった。
「そうじゃないけど…ダルシャに親しみを持ったってことなんじゃないかしら?
もしかしたら、ダルシャもジャックになにか秘密をうちあけたのかもしれないし…」
「ダルシャの秘密って…あの事か?
でも、それならもう俺が……」
「ダルシャの秘密は何も猫男の呪いのことだけじゃないと思うわ。
だって、私達、誰もダルシャのことは詳しく知らないじゃない。」
「そりゃあそうだけど、ダルシャはなんとかいう貴族の家の息子なんだろう?
だったら、何の問題もないんじゃないか?」
「……フレイザー、あなた、本当にそんな風に思ってるの?
貴族でお金があれば何の悩みもないって……」
セリナの咎めるような視線に、フレイザーはそっと俯いた。
「セリナ…すまないが、俺、なんだかちょっと疲れたみたいだ。
夕食まで部屋で休んでるよ…」
どうしようもなくもやもやする気持ちと、なんとも言い難い自己嫌悪のようなものを感じ、フレイザーはセリナの元を離れた。
(どうしたんだろう…
俺だって、ダルシャのことは信頼してるし、恩も感じてるし、もちろん嫌いじゃない。
……なのに、なんでこんなに苛々するんだ…!?)
自分の気持ちなのに、その真意が理解出来ず、フレイザーは晴れない気持ちを抱えて部屋に向かって駆け出した。
「フレイザー!」
「あっ!セ…セリナ!」
後ろからぽんと背中を叩かれたフレイザーは、焦った顔でセリナをみつめる。
「……今日もあの二人、朝からべったりね…
深刻な顔して、何を話しているのかしら?
……まさか、ジャック…あのことを…」
「それはないだろう。
あんなこと、普通はなかなか話せない筈だ。」
「そうね…信頼出来る相手じゃないと、あんなこと話せないわよね。
でも、ダルシャはそういう点では信頼出来る人よ。
言ってはいけないことは絶対に言わないし、人を裏切るようなことはしない。
だからこそ、獣人のアルディやカイン、それにあのブライアンも彼のことをとても信頼してるでしょう?」
「そりゃあ、まぁ、そうだけど…」
フレイザー自身もダルシャのことを信頼している部分があり、セリナの言うことに反論出来ないことが不思議と腹立たしく、フレイザーは言葉を濁した。
「話すことでジャックの心が軽くなるのなら、それはきっと悪いことではないと思うわ。
秘密ってとても重い物だから…
だから、身近な人間が共有して軽くしてあげなきゃならないと思うのよ。」
「……俺やセリナに言うだけじゃ足りないっていうのか?」
フレイザーの声が殊更不機嫌なものに変わった。
「そうじゃないけど…ダルシャに親しみを持ったってことなんじゃないかしら?
もしかしたら、ダルシャもジャックになにか秘密をうちあけたのかもしれないし…」
「ダルシャの秘密って…あの事か?
でも、それならもう俺が……」
「ダルシャの秘密は何も猫男の呪いのことだけじゃないと思うわ。
だって、私達、誰もダルシャのことは詳しく知らないじゃない。」
「そりゃあそうだけど、ダルシャはなんとかいう貴族の家の息子なんだろう?
だったら、何の問題もないんじゃないか?」
「……フレイザー、あなた、本当にそんな風に思ってるの?
貴族でお金があれば何の悩みもないって……」
セリナの咎めるような視線に、フレイザーはそっと俯いた。
「セリナ…すまないが、俺、なんだかちょっと疲れたみたいだ。
夕食まで部屋で休んでるよ…」
どうしようもなくもやもやする気持ちと、なんとも言い難い自己嫌悪のようなものを感じ、フレイザーはセリナの元を離れた。
(どうしたんだろう…
俺だって、ダルシャのことは信頼してるし、恩も感じてるし、もちろん嫌いじゃない。
……なのに、なんでこんなに苛々するんだ…!?)
自分の気持ちなのに、その真意が理解出来ず、フレイザーは晴れない気持ちを抱えて部屋に向かって駆け出した。
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