379 / 802
ディーラスを目指して
65
しおりを挟む
*
「そこです。
そこを掘ってみてください。
すぐにみつかるはずです。」
ブライアンは、台座の向こうの土砂の固まりを指差す。
「わかってる!
……ダルシャ、明かりを持っててくれ。」
ラスターは苛立った声をあげ、ランプを手渡すと台座を横に退け、その後ろの土砂を素手で掘り始めた。
「あ……」
ブライアンの言った通りだった。
ほんの少しの土砂を払っただけで、すぐに願い石のつるりとした表面が姿を現した。
それを見たラスターの手の動きが早まり、願い石はあっと言う間に土砂の中から掘り出された。
「あった……」
ラスターが服の裾で願い石の表面を拭うと、本来の美しい紫色がよみがえった。
「ほらね…ブライアンの言った通りでしょう?」
セリナのその一言で放心状態だったラスターは我に返り、敵意のこもった眼差しでブライアンをきっと睨み、願い石を両手で包み込むようにして持ち上げた。
「金を…一生、おもしろおかしく遊んで暮らせるだけの大金をくれ!」
洞窟の中に、ラスターの悲痛な叫びが響き渡る。
束の間の息詰まる静寂…
「……だめだ。
こいつは双子石だ…」
残念そうな…なのに、不思議とどこかほっとしたようにラスターが呟いた。
「双子石だったか…」
ラスターの言葉を繰り返し、ダルシャはゆっくりと息を吐き出す。
「ね…ラスター…その石、ボクにくれないかな?」
エリオットがおずおずとラスターに声をかけた。
「この石を?だけど、これは双子石だから願いが叶うわけじゃないんだぞ。」
「う、うん、それでも良いんだ。
ボク…紫が好きなんだよ。」
「へぇ、そうだったんだ…
ダルシャ、エリオットにやっても良いよな?」
「あぁ、構わん。」
ダルシャの了解を得て、エリオットはラスターから紫色の願い石を受け取った。
「あ、ありがとう!
ボク、大切にするよ!」
嬉しそうに紫の双子石を手に取るエリオットを見て、フレイザーも安心したように微笑んだ。
「……それじゃあ…戻るとするか…
戻ったら、久し振りの再会を祝って宴会だな。」
ダルシャの声に従い、一行はぞろぞろと外に向かって歩き始めた。
「そこです。
そこを掘ってみてください。
すぐにみつかるはずです。」
ブライアンは、台座の向こうの土砂の固まりを指差す。
「わかってる!
……ダルシャ、明かりを持っててくれ。」
ラスターは苛立った声をあげ、ランプを手渡すと台座を横に退け、その後ろの土砂を素手で掘り始めた。
「あ……」
ブライアンの言った通りだった。
ほんの少しの土砂を払っただけで、すぐに願い石のつるりとした表面が姿を現した。
それを見たラスターの手の動きが早まり、願い石はあっと言う間に土砂の中から掘り出された。
「あった……」
ラスターが服の裾で願い石の表面を拭うと、本来の美しい紫色がよみがえった。
「ほらね…ブライアンの言った通りでしょう?」
セリナのその一言で放心状態だったラスターは我に返り、敵意のこもった眼差しでブライアンをきっと睨み、願い石を両手で包み込むようにして持ち上げた。
「金を…一生、おもしろおかしく遊んで暮らせるだけの大金をくれ!」
洞窟の中に、ラスターの悲痛な叫びが響き渡る。
束の間の息詰まる静寂…
「……だめだ。
こいつは双子石だ…」
残念そうな…なのに、不思議とどこかほっとしたようにラスターが呟いた。
「双子石だったか…」
ラスターの言葉を繰り返し、ダルシャはゆっくりと息を吐き出す。
「ね…ラスター…その石、ボクにくれないかな?」
エリオットがおずおずとラスターに声をかけた。
「この石を?だけど、これは双子石だから願いが叶うわけじゃないんだぞ。」
「う、うん、それでも良いんだ。
ボク…紫が好きなんだよ。」
「へぇ、そうだったんだ…
ダルシャ、エリオットにやっても良いよな?」
「あぁ、構わん。」
ダルシャの了解を得て、エリオットはラスターから紫色の願い石を受け取った。
「あ、ありがとう!
ボク、大切にするよ!」
嬉しそうに紫の双子石を手に取るエリオットを見て、フレイザーも安心したように微笑んだ。
「……それじゃあ…戻るとするか…
戻ったら、久し振りの再会を祝って宴会だな。」
ダルシャの声に従い、一行はぞろぞろと外に向かって歩き始めた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
かつてダンジョン配信者として成功することを夢見たダンジョン配信者マネージャー、S級ダンジョンで休暇中に人気配信者に凸られた結果バズる
竜頭蛇
ファンタジー
伊藤淳は都内の某所にあるダンジョン配信者事務所のマネージャーをしており、かつて人気配信者を目指していた時の憧憬を抱えつつも、忙しない日々を送っていた。
ある時、ワーカーホリックになりかねていた淳を心配した社長から休暇を取らせられることになり、特に休日に何もすることがなく、暇になった淳は半年先にあるS級ダンジョン『破滅の扉』の配信プロジェクトの下見をすることで時間を潰すことにする.
モンスターの攻撃を利用していたウォータースライダーを息抜きで満喫していると、日本発のS級ダンジョン配信という箔に目が眩んだ事務所のNO.1配信者最上ヒカリとそのマネージャーの大口大火と鉢合わせする.
その配信で姿を晒すことになった淳は、さまざまな実力者から一目を置かれる様になり、世界に名を轟かす配信者となる.
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
異世界子ども食堂:通り魔に襲われた幼稚園児を助けようとして殺されたと思ったら異世界に居た。
克全
児童書・童話
両親を失い子ども食堂のお世話になっていた田中翔平は、通り魔に襲われていた幼稚園児を助けようとして殺された。気がついたら異世界の教会の地下室に居て、そのまま奴隷にされて競売にかけられた。幼稚園児たちを助けた事で、幼稚園の経営母体となっている稲荷神社の神様たちに気に入られて、隠しスキルと神運を手に入れていた田中翔平は、奴隷移送用馬車から逃げ出し、異世界に子ども食堂を作ろうと奮闘するのであった。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
メルレールの英雄-クオン編-前編
朱璃 翼
ファンタジー
月神を失って3000年ーー魂は巡り蘇る。
失われた月神の魂は再び戻り、世界の危機に覚醒するだろう。
バルスデ王国の最年少騎士団長クオン・メイ・シリウスはある日、不思議な夢を見るようになる。次第に夢は苦しめる存在となりーーーー。
※ノベルアップ+、小説家になろう、カクヨム同時掲載。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
精霊が俺の事を気に入ってくれているらしく過剰に尽くしてくれる!が、周囲には精霊が見えず俺の評価はよろしくない
よっしぃ
ファンタジー
俺には僅かながら魔力がある。この世界で魔力を持った人は少ないからそれだけで貴重な存在のはずなんだが、俺の場合そうじゃないらしい。
魔力があっても普通の魔法が使えない俺。
そんな俺が唯一使える魔法・・・・そんなのねーよ!
因みに俺の周囲には何故か精霊が頻繁にやってくる。
任意の精霊を召還するのは実はスキルなんだが、召喚した精霊をその場に留め使役するには魔力が必要だが、俺にスキルはないぞ。
極稀にスキルを所持している冒険者がいるが、引く手あまたでウラヤマ!
そうそう俺の総魔力量は少なく、精霊が俺の周囲で顕現化しても何かをさせる程の魔力がないから直ぐに姿が消えてしまう。
そんなある日転機が訪れる。
いつもの如く精霊が俺の魔力をねだって頂いちゃう訳だが、大抵俺はその場で気を失う。
昔ひょんな事から助けた精霊が俺の所に現れたんだが、この時俺はたまたまうつ伏せで倒れた。因みに顔面ダイブで鼻血が出たのは内緒だ。
そして当然ながら意識を失ったが、ふと目を覚ますと俺の周囲にはものすごい数の魔石やら素材があって驚いた。
精霊曰く御礼だってさ。
どうやら俺の魔力は非常に良いらしい。美味しいのか効果が高いのかは知らんが、精霊の好みらしい。
何故この日に限って精霊がずっと顕現化しているんだ?
どうやら俺がうつ伏せで地面に倒れたのが良かったらしい。
俺と地脈と繋がって、魔力が無限増殖状態だったようだ。
そしてこれが俺が冒険者として活動する時のスタイルになっていくんだが、理解しがたい体勢での活動に周囲の理解は得られなかった。
そんなある日、1人の女性が俺とパーティーを組みたいとやってきた。
ついでに精霊に彼女が呪われているのが分かったので解呪しておいた。
そんなある日、俺は所属しているパーティーから追放されてしまった。
そりゃあ戦闘中だろうがお構いなしに地面に寝そべってしまうんだから、あいつは一体何をしているんだ!となってしまうのは仕方がないが、これでも貢献していたんだぜ?
何せそうしている間は精霊達が勝手に魔物を仕留め、素材を集めてくれるし、俺の身をしっかり守ってくれているんだが、精霊が視えないメンバーには俺がただ寝ているだけにしか見えないらしい。
因みにダンジョンのボス部屋に1人放り込まれたんだが、俺と先にパーティーを組んでいたエレンは俺を助けにボス部屋へ突入してくれた。
流石にダンジョン中層でも深層のボス部屋、2人ではなあ。
俺はダンジョンの真っただ中に追放された訳だが、くしくも追放直後に俺の何かが変化した。
因みに寝そべっていなくてはいけない理由は顔面と心臓、そして掌を地面にくっつける事で地脈と繋がるらしい。地脈って何だ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる