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ディーラスを目指して
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「すまない、ブライアン…
こんな所で足止めを食わせてしまって…」
「いえ、僕はそんなこと何も…」
ブライアンは、微笑みながらゆっくりと首を振る。
「……決めた。明日には出発しよう!
仲間には宿にメッセージを残しておけば大丈夫だろう。」
「ダルシャ…僕のことなら本当にお気遣いはいりませんよ。
この数日間というもの、あなたといろいろなことを話せて、僕はとても楽しい時間を過ごす事が出来ました。
今まで同性の友人というものが、僕にはほとんどいなかったものですから…」
「ブライアン……」
どこか切ない表情で微笑むブライアンを、ダルシャはじっとみつめた。
あの日…ダルシャがブライアンと出会った日からすでに六日が過ぎていた。
気は急くものの、フレイザーとジャックはまだ姿を現さず、早く願い石のことを知りたいという気持ちと娯楽のない退屈なヘイレンでブライアンを待たせることに罪悪感を感じ、ダルシャの苛々は募るばかりだった。
「それは私も同じだよ。
仲間には話せないようなことを、君にはたくさん聞いてもらえた。
おかげで、私もずいぶんと気が晴れた。」
「それを言うなら僕だって…
あなたのおかげで僕はどれほど救われたかわかりません。
……あなたは本当に不思議な方だ…」
「君程じゃないけどね……」
二人は顔を見合せて微笑む。
この数日間で、二人の間には友情のようなものが芽生えていた。
ブライアンの読み取ったダルシャの過去は、ダルシャが今まで誰にも話したことのなかったことで、ダルシャはブライアンの能力を高く評価し賞賛した。
過去を言い当てることは、その人物をその時間に戻す事だ…と。
忘れかけていたその時の悲しい記憶や楽しかった気持ち…それらを再び思い出させてくれる素晴らしい力だと諭され、ブライアンはこみあげる涙を拭った。
「ブライアン、明日にはやはり出発しよう。
どう考えても遅すぎる。
まさかとは思うが、仲間になんらかのアクシデントがあったのかもしれないし、もしそうなら早くにディーラスの仲間と合流した方が良い。」
「そうですか…
それなら、そうしましょう。」
「では、そろそろ食事にでも行こうか…」
ダルシャがそう言って席を立ちかけた時、扉を叩く音が響いた。
「すまない、ブライアン…
こんな所で足止めを食わせてしまって…」
「いえ、僕はそんなこと何も…」
ブライアンは、微笑みながらゆっくりと首を振る。
「……決めた。明日には出発しよう!
仲間には宿にメッセージを残しておけば大丈夫だろう。」
「ダルシャ…僕のことなら本当にお気遣いはいりませんよ。
この数日間というもの、あなたといろいろなことを話せて、僕はとても楽しい時間を過ごす事が出来ました。
今まで同性の友人というものが、僕にはほとんどいなかったものですから…」
「ブライアン……」
どこか切ない表情で微笑むブライアンを、ダルシャはじっとみつめた。
あの日…ダルシャがブライアンと出会った日からすでに六日が過ぎていた。
気は急くものの、フレイザーとジャックはまだ姿を現さず、早く願い石のことを知りたいという気持ちと娯楽のない退屈なヘイレンでブライアンを待たせることに罪悪感を感じ、ダルシャの苛々は募るばかりだった。
「それは私も同じだよ。
仲間には話せないようなことを、君にはたくさん聞いてもらえた。
おかげで、私もずいぶんと気が晴れた。」
「それを言うなら僕だって…
あなたのおかげで僕はどれほど救われたかわかりません。
……あなたは本当に不思議な方だ…」
「君程じゃないけどね……」
二人は顔を見合せて微笑む。
この数日間で、二人の間には友情のようなものが芽生えていた。
ブライアンの読み取ったダルシャの過去は、ダルシャが今まで誰にも話したことのなかったことで、ダルシャはブライアンの能力を高く評価し賞賛した。
過去を言い当てることは、その人物をその時間に戻す事だ…と。
忘れかけていたその時の悲しい記憶や楽しかった気持ち…それらを再び思い出させてくれる素晴らしい力だと諭され、ブライアンはこみあげる涙を拭った。
「ブライアン、明日にはやはり出発しよう。
どう考えても遅すぎる。
まさかとは思うが、仲間になんらかのアクシデントがあったのかもしれないし、もしそうなら早くにディーラスの仲間と合流した方が良い。」
「そうですか…
それなら、そうしましょう。」
「では、そろそろ食事にでも行こうか…」
ダルシャがそう言って席を立ちかけた時、扉を叩く音が響いた。
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